ほっと一息
2026.02.06
身近な草木 和ハーブ入門 ユキノシタ 雪の下でも緑色
JA広報通信2026年1月号
植物民俗研究家/和ハーブ協会副理事長●平川美鶴
ユキノシタは「雪」とのつながりを感じさせてくれます。冷たい雪の下でも枯れることなく緑色の葉を広げ、一年を通して採取できます。葉のまだら模様は、葉の上に雪が積もった様子にも見立てられます。そこには実際に空気の層があり、人の目には白っぽく映るのです。
さらにもう一つ名前の由来があります。それはちらちらと降る雪のような白い花々です。お目にかかれるのは梅雨時ですので半年ほど先になりますが、このときとばかりにユキノシタがにぎやかな姿に変身しますので、少し立ち止まって花を細かく観察してみましょう。白地にピンクの水玉ブラウスと白いロングスカートを身に着けていますよ。自然のもたらす造形美はとてもユニークで、どうしてこのデザインにしたのかな? と興味深いものがあります。
さながら雪の妖精のようなユキノシタですが、生存戦略は結構したたかです。花を咲かせて種子を飛ばす他、赤い糸状のランナー(地面をはうように伸びる茎)を伸ばして先端から子株を差し出し、気付けば向こう側へ陣地を広げています。葉は害虫に食べられないよう、毛むくじゃらにして身を守っています。
生薬名では「虎耳草(コジソウ)」といいます。浅い切れ込みのある丸葉の形が由来です。言われてみれば、トラなど動物の耳のようにも見えますね。民間療法ではやけどの応急処置に葉を貼っておく、葉の搾り汁を耳に垂らし、中耳炎などに作用するとも伝えられてきました。
食べるときは肉厚な葉を採取して片面だけに天ぷら衣を付け、さっと揚げて熱々のうちにいただきましょう。癖がなく食感が良いのもユキノシタの魅力です。日が当たりにくい湿った場所を好んで育ちますが生命力が強いので、庭先で増やしたくない方は鉢植えにして可憐(かれん)な姿形を楽しむのもお勧めです。
※採取の際は私有地や保護区域に入らず、似た植物と間違えないように注意し、必要な分だけ取りましょう。

庭先のユキノシタ
植物民俗研究家/一般社団法人和ハーブ協会副理事長 平川 美鶴(ひらかわ みつる)

8月2日“ハーブの日”生まれ。全国各地の足元の植物と人のつながりを訪ね、日本人らしい生き方や感性を探求。講演、執筆、ものづくり、フィールド案内、実践ワークショップ、地域創生プログラムなど幅広く携わっている。著書に『和ハーブのある暮らし』(エクスナレッジ)など。


