ほっと一息
2025.10.21
資産管理の法律ガイド
JA広報通信2025年10月号
JA全中・JA全国相続相談・資産支援チーム 顧問弁護士●草薙一郎
親族法について その26
今回は、養子縁組と氏について説明します。
■ 養子は養親の氏に改姓することが原則
Aと養子縁組をして養子となったたBは、Aの氏に改姓することになります(民法810条)。そして、Aが戸籍筆頭者であれば、BはAの戸籍に入ることになります。
しかし、Bに実子やまたは養子であるCがいたときは、BがAの養子になっても、CはAと同じ氏にはならず元のままの氏になります。そのため、子Cの戸籍は動きません。つまり、BC親子は異なる氏になります。もし、CがBと同じ氏に改姓したいときは、氏の変更手続きを裁判所に申し立てることになります。
■ 養親が戸籍の筆頭者でないときは新たに戸籍を作成する
例えば甲乙夫婦の子で独身の丙が、丁を養子にしたいときには、丙を筆頭者とする戸籍を新たに作成して、丁が養子としてその戸籍に入り、丙と同じ氏に改姓します。
事例を変えて、夫の氏を称していた田中さん夫妻の夫が、独身である鈴木さんの養子となるとき、夫は鈴木の氏に改姓しますが、妻も鈴木の氏に改姓します。もちろん、夫が鈴木さんの養子になるには配偶者である妻の同意が必要です。そして、鈴木さんを筆頭者とした新しい戸籍が作成されます。
しかし、田中さん夫妻のうち、結婚して改姓した妻が鈴木さんと養子縁組をするときは、田中さんのままとされています(民法810条ただし書き)。そして、この場合、妻が鈴木さんと養子縁組をしたことは田中さん夫妻の戸籍に記載されますが、新しい戸籍が作成されるわけではありません。
夫の氏を称している夫妻の夫が妻の実親と養子縁組をすることがよくあります。この場合、夫は妻の実親の氏に改姓することとなり、夫が氏を変えたことから妻も実親と同じ氏に再度改姓することになります。
次回は、養子縁組の解消について説明します。