ほっと一息

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2025.10.21

知って納得

JA広報通信2025年10月号

JA全中・JA全国相続相談・資産支援チーム 顧問税理士●柴原 一

どうする? 相続空き家

 

 近年、空き家の増加が社会問題となっています。5年ごとに調査が行われる「住宅・土地統計調査(令和5年版)」によると、全国の空き家は900万2000戸、空き家率13・8%で過去最高数値です。
 空き家になる原因として最も多いのは相続です。人が住まなくなった家は朽ちる一方で、安易に取り壊すことのできない事情もあります。
 固定資産税は、その年1月1日時点の土地・家屋の所有者に対して、市町村(東京23区の場合には東京都)が課税する税です。
 専用住宅(もっぱら人の居住の用に供される家屋)の敷地、または併用住宅(一部が居住に使用される家屋で、その家屋の床面積に対する居住部分の割合が4分の1以上あるもの)の敷地を住宅用地と呼びます。住宅用地はさらに面積に応じて課税標準が減額され、200平方m以下の部分は「小規模住宅用地」として6分の1に、それ以外の部分は「一般住宅用地」として3分の1になります(家屋の減額特例もありますが新築家屋が対象であり、新築家屋で空き家になるケースはあまりないため割愛します)。
 つまり空き家を取り壊すと住宅用地ではなくなるため、固定資産税が約6倍に跳ね上がります。固定資産税の増加を防ぐ観点から「取りあえず空き家をそのままにしている」方が多く、その「取りあえず」が5年、10年と長期化し、景観を損ね、適切な管理が行われていない管理不全空家等や特定空家等となってしまっているものもあります。
 管理不全空家等や特定空家等とみなされた場合には、まず市区町村から助言や指導が行われます。それでも改善されない場合には勧告が行われ、勧告を受けた場合には固定資産税の住宅用地の特例の適用対象外となります。衛生や景観の問題はもちろん、災害の多い国である点も踏まえて、相続した後の空き家の管理は適切に行いましょう。相続空き家を思い切って手放すのも一案です。
 次回は、相続空き家を売却した場合の特例をご紹介します。