ほっと一息

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2025.10.06

野菜もの知り百科

JA広報通信2025年10月号

土壌医●藤巻久志

アピオス(マメ科ホドイモ属)

 

 「イモ」と呼ばれるものは、根や地下茎が肥大して養分を蓄えた器官です。サツマイモは根が肥大した塊根、ジャガイモやサトイモは地下茎が肥大した塊茎を食用とします。マメ科野菜の多くは花の後にできたさやや豆を利用しますが、アピオスはマメ科にもかかわらず地下部にできる塊茎を食べる珍しい野菜です。
 芋類は炭水化物を多く含み、一般に穀物より作りやすく天候の変化にも強いので、世界には芋を主食にしている地域が多数あります。アピオスは原産地である北米の先住民がスタミナ源としてきたことから、アメリカホドイモやインディアンポテトとも呼ばれています。ホドイモは漢字では「塊芋」と書きます。
 アピオスは日本には明治時代初期に米国からリンゴの苗木を輸入した際、その土の中に混ざって青森県に入ったといわれています。現在でも青森県の南部地方には全国有数の産地があります。
 夏になると、赤紫色で小さな花が長い茎に房状に多く付きます。とても美しい花なのであんどん作りにして観賞用にも、つる性植物なので緑のカーテンにも利用できます。花には芳香性があり、サラダや天ぷらにして食べられます。花を乾燥させてよくいるとアピオス茶になります。
 秋になると地上部が枯れ、地下部に数珠のように10~20個つながった塊茎ができます。塊茎がアピオン(西洋梨)に似ているのでアピオスの名が付きました。
 ジャガイモやサツマイモのようにホクホクとした食感で甘さがあり、ラッカセイに似た味もするので、ポテトビーンやグラウンドナッツという別名もあります。
 直径2〜5cmの塊茎は皮ごと素揚げにしたり、ゆでたりして食べます。カルシウム、鉄分、タンパク質、ビタミン類をジャガイモやサツマイモよりもはるかに多く含みます。豊富な食物繊維は便秘解消、イソフラボンは更年期障害や骨粗しょう症の予防、美肌効果などが期待できるとされています。

 

 

 

藤巻 久志(ふじまき ひさし)
野菜研究家、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。