ほっと一息
2025.10.05
なくそう食品ロス
JA広報通信2025年10月号
食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美
捨てるところのないダイコン
2025年の立冬は11月7日。立冬を過ぎるとダイコンのおいしい季節がやって来ます。
ダイコンといえば、明治時代から昭和時代に日本で活躍した美食家、北大路魯山人(きたおおじ・ろさんじん)。幼い頃からダイコンを上手に料理していたそうです。
ノンフィクション作家の山田和(かず)さんは、著書『知られざる魯山人』(文春文庫)でそのことを書いています。父親が魯山人と親交があったそうです。
魯山人は、幼い頃にある夫婦の養子になりました。6歳のとき、炊事を買って出ます。
魯山人は、ご飯の炊き方は9歳でマスターしたとのこと。等級の低い米でも、数種類を混ぜて炊くとおいしくなること、米を研いだ後の水切り時間や火加減で味が変わることを知りました。
野菜くずなど捨ててしまう部位も、新鮮であればおいしいことにも気付きました。葉や茎、根っこの部分も食べられるのです。
魯山人は「大根の皮の部分といふものは元來廢物ではないのである。皮の部分にこそ大根の特別な味もあり精分もある。(中略)それの解らない料理人は鎌倉で抜き立ての大根をあてがつても皮を剝いて仕舞ふ。(中略)大根の皮はかういふものであることを呑み込んでゐるのでなければ本當(ほんとう)の料理人とは云へない」と述べています。
管理栄養士の小嶋絵美さんの著書『捨てないレシピ』(サンクチュアリ出版)では「だいこんは根も葉もおいしく食べられ、捨てるところがほぼない優秀食材」と紹介されています。切り干し大根や葉を刻んで炒めたふりかけ、皮のパリパリ漬け、葉の浅漬けとそれを混ぜたご飯など、見るだけでもおいしそうなレシピが載っています。
ダイコンを煮て、とろけるような味わいにするのも良し、シャキシャキ感を楽しむのも良し。この冬はダイコン料理を楽しんでみませんか。
食品ロス問題ジャーナリスト
井出 留美(いで るみ)
株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。