ほっと一息

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2025.08.19

ごはんをおいしく楽しもう

JA広報通信2025年8月号

米・食味鑑定士/お米ライター●柏木智帆

 

新米は水分が多いわけではない?

 

 新米が待ち遠しい季節になりました。新米は水分が多いので炊飯時は水を少なめに、といわれることがあります。確かに、お米によってはみずみずしさや柔らかさ、粘り強さなどがありますが、必ずしも水分が多いわけではありません。
 一般的に収穫後のお米は機械乾燥で水分値を15%前後まで落としていきます。1年たった古米は新米に比べれば保管状況次第で水分値が減る場合もありますが、基本的にお米はしっかりと温度と湿度が管理された環境で玄米のまま保存されているため、大幅に水分が飛んでしまうことはありません。
 新米がみずみずしく軟らかめに炊き上がるのは、収穫したてのお米は細胞壁やでんぷんを囲むアミロプラストと呼ばれる膜が柔らかいことで炊飯の熱が入りやすくなるから。加えて、お米の水分が落ち着いていないからです。水分値が15%前後といっても、全てのお米が同じ数値になるわけではなく、14%のお米もあれば16%のお米もあるなど、ばらつきがあります。その差異は急乾燥させたお米ほど顕著で、早刈り米に多い「活き青(いきあお)」と呼ばれる未成熟米は17%だったり18%だったりと水分値が高い傾向です。
 一方で、冷蔵で1年寝かせた古米は米粒同士の水分が移動して均一になるため、米粒の水分値の差異が少なくなります。そして細胞壁やアミロプラストの膜が硬化する他、タンパク質の構造が変質して熱によるでんぷんの崩壊が小さくなるため、粘りが少なく硬くなりやすいです。
 新米は水を少なめにして炊くという方法自体に間違いはありませんが、お米の質はそれぞれですから新米といっても一様ではありません。みずみずしく軟らかめに炊ける新米もあれば、そうでない新米もあります。まずは通常通りに炊いてみてから、水量を加減して炊飯することをお勧めします。

 

 


玄米で冷蔵保管しても経時変化していく