ほっと一息

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2025.08.08

なくそう食品ロス

JA広報通信2025年8月号

食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美

救缶鳥プロジェクトから考える食品ロス

 

 9月は防災月間。2009年に始まった備蓄食品の食品ロスを削減する取り組み「救缶鳥(きゅうかんちょう)プロジェクト」をご存じでしょうか。栃木県那須塩原市でパンの缶詰製造・販売を展開する株式会社パン・アキモトが展開している取り組みで、災害時の備蓄食品などとしてパンの缶詰を購入した客のうち、再度購入を希望する人に対して、半年から1年間の賞味期限が残っているものを引き取り、世界の飢餓・紛争地域や国内外の災害被災地などへ届けるプロジェクトです。
 この取り組みが始まったきっかけは、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災でした。被災地に普通のパンを届けたものの、混乱の中で配り切ることができず、その多くを捨てることになってしまいました。その後、パン・アキモトでは試行錯誤を重ね、賞味期限が最長で5年間保存できるパンの缶詰を開発しました。また、パンの缶詰開発だけでなく、回収・支援の仕組みを構築することで、さらに食品ロス削減にも貢献しています。売っておしまい、買っておしまいではなく、その後のことも考えているそうです。
 私たちも、備蓄食品を購入する際に賞味期限が長いものを選ぶことで、食品ロスを削減することができます。特にお薦めの備蓄食品はアルファ米です。水やお湯を入れるだけでご飯ができ、賞味期限は長いもので5年以上あります。
 災害時の支援食料はおにぎりや菓子パン、カップ麺など炭水化物に偏りがちなので、タンパク質が補給でき、長期間保存できる魚や豆類の缶詰もお薦めです。また、常温で5年間保存できる野菜ジュースもあります。被災時に不足するビタミンやミネラルなどを補給できます。炊飯時に水の代わりに野菜ジュースで炊くと栄養素を補えます。
 備蓄食品は、買ったはいいけれど保管後の入れ替え時に捨てられて食品ロスとなってしまうことがあります。賞味期限が近づいたら計画的に食べるようにすると、さらに食品ロス削減につながりますね。

 

 

 

食品ロス問題ジャーナリスト
井出 留美(いで るみ)
株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。