ほっと一息

ほっと一息

2025.07.18

トラブル回避の基礎知識

JA広報通信2025年7月号

国民生活センター相談情報部●岡島睦美

今から考えておきたい「デジタル終活」

 

 「デジタル終活」の必要性が高まっています。
【事例】夫が亡くなり携帯電話を解約したが、スマートフォン(以下、スマホ)のセキュリティーサービスのサブスク(サブスクリプションの略=定額制の継続サービス)の契約が残っていたことに気が付いた。サービス提供会社に問い合わせると、「すぐに解約するにはID・パスワードが必要だ」と言われた。ID・パスワードは夫本人が管理していたので分からない。どうすれば良いか。
【解説】スマホの普及に伴い、インターネット上で契約を結ぶ機会が増えています。ネット上の契約や資産は、現代ならではの「デジタル遺品」として、遺族にとって深刻な問題になることがあります。
 ネット上で結んだ契約は安全性を担保するため、登録時に設定したID・パスワードを契約者本人が厳重に管理することを求められ、家族であっても安易に共有できなくなっています。契約者が突然亡くなるなどした場合には、そもそもどのような契約を結んでいたのか把握すること自体が困難な場合が多く、契約が特定できたとしても、ID・パスワードが分からないと、解約などの手続きが容易にできず、本人の死亡や遺族であることを証明する書類などを提示する必要があったり、契約先によっては連絡が取りづらかったりして、サブスクが解約できない状態が続く場合があります。
 トラブルを避けるためには、万が一のときにスマホのロックが解除できるようにしておくこと、契約ごとにID・パスワードを整理して家族と共有しておくこと、AppleやGoogleなどが提供する故人のアカウントにアクセスできる人を設定するサービスを利用することなど、具体的な対策をしておくことが大事です。
 スマホの中の見えない契約で残された家族が困らないよう、「デジタル終活」を自身の問題として考え、エンディングノートの作成を今から始めておきましょう。