ほっと一息
2025.06.25
知って納得! 税金講座
JA広報通信2025年6月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問税理士●柴原 一
どうなる 年収の壁
「年収の壁」とは、給与所得者の場合における所得税がかからない収入金額の上限を指します。令和7年度の税制改正により「年収103万円の壁」が変わることになりました。具体的には、令和7年分から所得税の基礎控除が最高48万円から最高95万円に、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられたことにより、所得税がかかり始める年収が103万円から160万円へと引き上げられました。
年収の壁の話で分かりにくいのは、給与所得者本人の税金の視点と、その給与所得者を扶養している者の所得控除の適用の可否についての視点があるということです。まず、給与所得者本人の税金ですが、改正後は年収110万円を超えると住民税が課税されます。さらに年収160万円を超えると所得税が課税されますが、学生の場合には勤労学生控除の適用により、住民税は年収134万円まで課税されません。
次に、扶養者側の視点に立つと、配偶者やその他の親族等の年収が123万円を超えると「扶養」から外れます。扶養親族か否かは、障害者控除や住民税の非課税計算の規定に影響を与えるため、123万円は一つの節目として重要です。年収123万円以下であれば、配偶者は配偶者控除、その他の親族等は扶養控除の対象です。
では、年収123万円を超えるとどうなるのでしょうか。配偶者の場合には年収201万円まで配偶者特別控除が適用できますが、控除額は段階的に縮小されます。その他の親族等の場合には、改正前は年収の壁を越えると一切控除はありませんでしたが今回の改正により、19~22歳の者に限り特定親族特別控除が創設されました。この控除により、年収150万円までは特定扶養控除と同額の63万円、150万円を超えても188万円までは段階的に控除額を縮小しながら控除を受けることができます。