ほっと一息
2025.06.10
野菜もの知り百科
JA広報通信2025年6月号
土壌医●藤巻久志
エンサイ(ヒルガオ科サツマイモ属)
エンサイは熱帯アジア原産で、日本本土には1972年の日中国交正常化に伴い、パンダのカンカン・ランランと一緒に「中国野菜」としてやって来ました。エンサイは「空心菜(クウシンサイ)」「蕹菜(ヨウサイ)」「通菜(ツウサイ)」などいろいろな名前がありますが、1983年の農林水産省通達により「エンサイ」に統一されました。
沖縄県では「ウンチェー」や「ウンチェーバー」といい、古くから栽培されてきました。サツマイモ属の植物を食害するゾウムシなどのまん延を防ぐため、本土への移動は植物防疫法によって規制されています。不妊虫放飼という方法でウリミバエを駆逐した沖縄県は、近い将来、ゾウムシなども根絶すると思います。
エンサイはサツマイモの葉を細長くしたような葉形で、茎の中は「空心菜」の名前の通り空洞です。秋にはアサガオに似た白い花を咲かせるので「朝顔菜(アサガオナ)」の別名もあります。暑さに極めて強く旺盛に生育するので、青物が少なくなる夏場に重宝されています。
エンサイはベータカロテンをホウレンソウや小松菜よりも多く含む緑黄色野菜です。ベータカロテンは体内でビタミンAに変化して粘膜や皮膚を守り、風邪やウイルス病を予防します。抗酸化作用で老化やがんも予防するといわれています。
青菜炒めは家庭では一般に小松菜やホウレンソウを使いますが、中華料理店ではエンサイを強火でサッと炒めることが多いです。シャキシャキした食感がくせになります。塩・こしょうだけでもおいしく食べられます。おひたしやごまあえ、みそ汁の具など和風料理にも用いられます。調理直後は緑色が鮮やかですが、時間がたつと黒ずんでくるので、早めに食べるようにします。
エンサイは病害虫に強く、プランターでも簡単に栽培できます。成長点の柔らかい部分を摘めば、生でサラダにもできます。新芽の色合いと独特の歯応えが楽しめます。
藤巻 久志(ふじまき ひさし)
野菜研究家、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。