ほっと一息
2025.06.09
なくそう食品ロス
JA広報通信2025年6月号
食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美
なくそう食品ロス
お米を食べて日本の農業を守ろう
「米の値段が高過ぎる」と、2025年初めに多く報じられました。「いつ値段が下がるのか」と。確かに価格が高過ぎれば需要は落ちてしまうかもしれません。
総務省の家計調査を見ると、2010年を境にして、消費者は米よりパンに多くのお金を投じてきました。消費者が米を食べなくなったのではありません。家で米を炊かずに市販のおにぎりなど中食や外食で食べるようになったのです。調理の手間が要らないからです。市販のパンもそのまま食べられます。
農林水産省の資料「(参考)茶わん1杯のお米の値段」には、「ご飯は経済的な食べ物で、1杯(1膳)の値段は約25円」とあります(2023年5月、5kgの米の価格1890円で算出)。
農林水産省が2025年3月3〜9日、全国約1000のスーパーを調べたところ、精米5kgの販売価格は4077円でした。ご飯1杯の価格は約55円。市販のおにぎりやパンなら55円では買えないはずです。
食パンなら1斤100円前後で買えるものもあるでしょう。ではその小麦はどこで生産されたのでしょうか。日本で流通するパンのうち、国産小麦のパンは8%程度。残り92%は外国産小麦です。外国産小麦には防虫剤が使われているものもあります。安さだけで食べ物を選んでいいのでしょうか。
「安いものしか買えない」という意見があります。海外では一定の経済水準に達しない世帯や個人が食料を低価格で購入、あるいは無料で受け取れる仕組みがあることも多いです。そうすれば、どのような経済水準の人も十分に食べられます。
農林水産省の営農類型別経営統計(稲作、2023年)によれば、稲作農家は「時給97円」。食料を生産せず消費するだけの消費者は、適正な食料品価格を支払い生産者を買い支えることが重要ではないでしょうか。それがひいては食品ロス削減や日本の食料安全保障につながるはずです。
食品ロス問題ジャーナリスト
井出 留美(いで るみ)
株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。