ほっと一息

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2025.04.18

身近な草木 和ハーブ入門

JA広報通信2025年4月号

植物民俗研究家/和ハーブ協会副理事長●平川美鶴

 

サンショウ 香り高い和ハーブ&スパイス

 

 果実をかむとピリッと辛い「山(に育つ)の椒(しょう=辛味)」。そんな名を持つサンショウ(山椒)は、爽やかな香りとしびれるような辛味が特徴です。江戸期のベストセラー料理本『豆腐百珍』では、サンショウの粉末やすったものと豆腐のレシピがたびたび登場します。
 サンショウは縄文遺跡からも見つかっています。当時の人々がどのように活用していたかは定かではありませんが、この香りや辛味を好んだことでしょう。シンプルな素材のうま味を引き立たせるばかりでなく、消化不良や食欲が振るわないときにもお薦めです。
 庭木として育てれば季節ごとに葉、花、果実と楽しめます。
 浅緑の新芽は柔らかく品のある香りで、どことなく爽やかさも持ち合わせています。それもそのはず、サンショウがミカンの仲間と分かれば納得ですね。間引くように摘んだらフレッシュ和ハーブティーにして春の恵みを楽しみましょう。葉は炊いたタケノコやちらしずしに添えたり、さんしょうみそにしたりすると箸が止まりません。
 5、6月ごろには青緑色の果実をちりめんじゃこと炊いていただきます。また、さっと湯がいて塩漬けにすれば和スパイスとして長期利用ができます。青い果実の採取期間は短く、種子がまだ白いうちを見計らいます。品種により枝や葉柄の部分にとげがあるため気を付けましょう。
 熟した果実は乾燥させ、使う際に少量ずつミルにかけて細かくすると香り高いまま楽しめます。バニラアイスにトッピングし、しょうゆをひと回しかけていただけば、ちょっと大人なデザートになります。

 

 


ちりめんさんしょうご飯

 

 

サンショウの風味は古くから
日本人に愛されてきた

 

 

植物民俗研究家/一般社団法人和ハーブ協会副理事長
平川 美鶴 (ひらかわ みつる)
8月2日“ハーブの日”生まれ。全国各地の足元の植物と人のつながりを訪ね、日本人らしい生き方や感性を探求。講演、執筆、ものづくり、フィールド案内、実践ワークショップ、地域創生プログラムなど幅広く携わっている。著書に『和ハーブのある暮らし』(エクスナレッジ)など。