ほっと一息
2025.01.13
なくそう食品ロス
JA広報通信2025年1月
食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美
恵方巻き
2月は恵方巻きの季節です。
大好きなすしが、売れ残って捨てられていると知ったのは2016年の2月3日でした。一方で、この日、フランスでは世界初となる食料廃棄を禁ずる法律が成立したのです。当時のSNS(会員制交流サイト)では「フランスは素晴らしい」「日本はどうなってる」と、ごみ袋に入った大量の恵方巻きの写真が投稿されていました。
17年に初めて恵方巻き廃棄の記事を書きました。スーパーでは奥にキッチンがあることが多く、客の入り数や在庫を見ながら売る数を調整できます。でも、コンビニではほとんどの店にキッチンがなく、発注しただけ商品棚に並べなければならず、売れ残りが多く発生する、といった内容でした。
19年から、毎年節分の日に、スーパーやコンビニなどで売れ残っている恵方巻きの数を調査し記事を書くようになりました。大学生や高校生、最近では社会人の方や遠方の方なども参加してくださっています。
24年2月には、恵方巻きの売れ残り調査に関し、BBC(英国放送協会)の記者から取材を受けることになりました。私の活動を長年見てくださっている大学の先生が記者に推薦してくれたのです。
24年3月に記者が来日し、一緒にコンビニを訪問し、インターンとして調査に協力してくれた高校生にも声をかけ、取材を受けてもらいました。BBCの記事は24年6月に英語と日本語で発信されました。記事が出た後、オーストラリアの記者から別の取材を受けるなど、反響がありました。
「食品ロスを減らすと経済が縮む」「売り上げが減るから食品ロスは減らすな、必要悪だ」という意見があります。でも、食品ロスを減らしながら売り上げを増加させたスーパーやパン屋、回転ずし屋などの事例はいくつもあります。
売り上げを増やしても、その裏で恵方巻きを大量に捨て続けていたら、福が来るどころか、逆に罰が当たると思うのです。
食品ロス問題ジャーナリスト
井出 留美(いで るみ)
株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。