ほっと一息
2025.01.14
みんなのSDGs 田んぼソムリエになろう
JA広報通信2025年1月号
田んぼソムリエ●林 鷹央
日本一おめでたい地名?
日本中の田んぼを回って生きもの調査をしていると、市町村のさまざまな地名に驚きます。日本一おめでたい地名として思い浮かんだのが、島根県浜田市にある“弥栄(やさか)地区〟です。
いにしえより日本では、豊穣(ほうじょう)・繁栄などを祈り、祝いの席で「弥栄(いやさか)」と声を挙げて杯を交わすことがあります。私も、田んぼソムリエとして「田んぼが生きものでいっぱいになるように」という意味で「乾杯」の代わりに「弥栄」と唱えることもあります。
以前、弥栄地区を訪問したときに「田んぼの生きもの調査担当の職員がいるから紹介します」と言われ、どのおじさんだろう? と見回したところ、目の前の若い女性だったので驚いたことがありました。風の谷のナウシカのような新たな人材が、自然豊かな地域から出てきた! と未来に希望を感じています。
過疎による人口減少がある中、有機農業にもチャレンジしている浜田市。里山風景が維持され、山林からの清水や渓流の水が、米と田んぼの生きものたちを支えています。各地で問題となっているジャンボタニシやアメリカザリガニなどの外来種もいません。
皆さんも、田んぼの生きものが豊かで、多様性が守られていることを祝い「弥栄~!」と言ってお酒を飲んでみてはいかがでしょうか。
田んぼの生きもの調査の若きリーダー(右端)
森、清水、川、ため池、土水路など、生きものたちの多様性が保たれる水環境がある
田んぼソムリエ
林 鷹央(はやし たかお)
三重県生まれ、東京育ち。「田んぼの生きもの調査」を通して全国の農村・学校で生物多様性や農・里山文化の意義を伝える。著書に『田んぼソムリエになる!』(安心農業株式会社刊)がある。