ほっと一息

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2024.12.09

なくそう食品ロス

JA広報通信2024年12月号

食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美

なくそう食品ロス     餅

 

 「餅」というとお正月のイメージですが、2014年4月ごろに岩手県一関市へ行ったとき、飲食店で何種類もの餅が出てきて驚きました。「餅膳」といって、あんこ餅やずんだ餅、くるみ餅、ごま餅、納豆餅など、9種類ぐらいの味付けの違う餅を楽しむことができます。

 

 一関市では、農作業や季節の節目、入学式や卒業式、冠婚葬祭など、さまざまなときに餅つきをしてきました(一関市公式観光サイトより)。江戸時代、一関地方を治めていた伊達藩の命で、毎月1日と15日に餅つきをして神様にお供えする習慣がありました。神様には白い餅を供える一方、貧しい農民が食べるのは、くず米に雑穀を混ぜた「しいなもち」。これをなんとかしておいしく食べようと工夫したことが、独自の「餅」文化を広めたのだそうです。

 

 昔は「鏡開き」といって、お供えした鏡餅を1月11日に下ろし、たたいて割って食べる習慣がありました。2段に重ねた餅の丸い形が昔の銅鏡に似ているから「鏡」だそうで、「割る」という言葉は縁起が悪いので「開く」という言葉を使ったとのことです(農林水産省公式サイトより)。

 

 今ではパック入りの切り餅や丸餅をスーパーで買う人も多いかもしれませんね。サトウ食品株式会社は、それまで15カ月だった餅の賞味期限を2016年より24カ月まで延長し、食品ロスの削減に貢献しました。どのような工夫をすることで賞味期限を延ばしたのでしょう?

 

 小さな餅をくるむ包装材に、酸素を吸収して水分の蒸散を抑えるフィルムを使いました。それにより、外からの酸素の浸入を防ぎ、餅の水分を保てるようにしたのです。

 

 以前は鮮度保持剤を入れていましたが、このフィルムを使うことで鮮度保持剤は不要となり、ごみも分別しやすくなりました。このような企業努力のおかげもあって、食品ロスも少しずつ減っているのですね。

 

 

 

食品ロス問題ジャーナリスト
井出 留美(いで るみ)
株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。