ほっと一息
2024.11.26
野菜もの知り百科
JA広報通信2024年11月号
土壌医●藤巻久志
イチゴ(バラ科オランダイチゴ属)
原則として野菜は草本、果物は木本です。イチゴは、木質化しないバラ科の草本なので、野菜に分類されます。イチゴは果物店でも売られているため、果実的野菜とも呼ばれています。リンゴや桃などもバラ科の果物で、花弁はみんなイチゴと同じ5枚です。
イチゴの可食部分は花托(かたく)という花の付け根が太ったものです。本当の果実ではないので偽果ともいいます。イチゴの本当の果実は表面の粒々で、その中に種が一つずつ入っています。
イチゴの旬はクリスマスや正月がある冬だと思っている人が多いですが、季語は初夏です。花は露地栽培では同じバラ科のサクラの開花頃からボツボツと咲き出します。
イチゴの出荷の最盛期が冬になったのは、ビニールハウスと暖房機の普及によるものです。それまではイチゴの産地といえば、冬の太陽熱を利用する石垣イチゴで有名な静岡県でした。今はほとんどがハウス栽培なので、産地は全国各地にあります。
日本初の品種は19世紀末に新宿御苑で育成された「福羽(ふくば)」です。昭和時代は米国から導入された「ダナー」と兵庫県農業試験場が育成した「宝交(ほうこう)早生」が主力品種でした。平成時代になると産地独自の育種が進み、より甘くより大きな品種が開発され、栃木県の「女峰」と福岡県の「とよのか」が東西の横綱になりました。
イチゴは野菜の中ではトップクラスのビタミンCを含んでいます。イチゴを1日5、6粒食べれば風邪の予防になるといわれています。へたを取って長時間水に漬けておくとビタミンCが減少するので、へたを付けたまま短時間で洗いましょう。
イチゴから出る生ごみはへただけです。追熟や食べ頃の判断の必要もなく、包丁もまな板もいりません。イチゴは甘く適度に酸味があり、彩りと香りも良く、老若男女に最も人気のある「フルーツ」の一つです。
藤巻 久志(ふじまき ひさし)
野菜研究家、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。