ほっと一息
2024.10.16
なくそう食品ロス すし
JA広報通信2024年10月号
食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美
11月1日は「寿司(すし)の日」。都落ちをした平清盛の孫、平維盛が、奈良県のすし屋で職人として身を隠し「鮨(すし)屋の弥助」と改名したのが11月1日だったとされることが由来です。
日本で普及している回転ずし。数回転して客に取ってもらえなかったすしは捨てるそうです。社員やアルバイトの学生らに聞きました。
回転ずしチェーンのある企業では「出来たてをお客さまに提供したい」という思いから、回転レーンを「回さない」店舗を2012年に開店しました。注文を受けてからすしを握るようにし、食品ロスを削減しつつ売り上げを1・5倍に伸ばしました。以前は「マグロ150皿」など、売れそうな量を感覚で準備していました。しかし、注文データを翌日以降の食材準備に活用し、食材の無駄も削減できたそうです。
「食品ロスを減らすと経済が縮む」という意見を聞きます。でも、この回転ずしチェーンのように、食品ロスを減らしながら売り上げを伸ばし、食品ロス削減と経営を両立させている事例は多くあります。
そもそも回転レーンで回り続けているすしは誰のために作ったものなのでしょう? 自分がすしを作る人なら、食べてくれるかどうか分からないと作りがいがありません。作ったのに捨てられるのは切ないです。食べる側も作った人の顔が見えれば無駄に残しはしないでしょう。
私は19年から毎年、恵方巻きの売れ残り調査をしています。24年2月3日夜12時前、あるコンビニでは88本残っていました。6月にBBC(英国放送協会)の取材を受け、英語と日本語で配信されました。
私にとってすしは単なる食べ物ではなく、家族との大切な思い出でもあります。お祝いには家でちらしずしを作るのが決まりでした。
恵方巻きは貴重な食資源の結晶です。米、のり、魚介類、卵……。すしを単なる金もうけの道具にし、売れ残れば燃やして捨てればいいという、愛のない、安直な考え方は許容できないのです。
食品ロス問題ジャーナリスト
井出 留美(いで るみ)
株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。