ほっと一息

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2026.03.12

身近な草木 和ハーブ入門 ヤブニッケイ スパイシーな和のシナモン

JA広報通信2026年2月号

植物民俗研究家/和ハーブ協会副理事長●平川美鶴

 

 ヤブニッケイ(藪肉桂)は日本野生種のシナモンです。東南アジア原産の「セイロンニッケイ」(いわゆる香辛料のシナモン)や中国原産の「シナニッケイ」(桂皮、ニッキ)と比較すると、シナモンらしい香りは控えめですが、葉をちぎったときに漂う香ばしさは決して「和のシナモン」の名に恥じません。

 関東以西の沿岸では比較的よく見かけられ、いったんヤブニッケイの特徴を覚えれば目に付くようになります。その理由ははっきりとした葉脈のデザインにあり! クスノキ科に多い「三行脈」(3本の脈が並行して走る)を示しています。一見よく似たシロダモも同じような環境に自生するため、慣れないうちは混同しやすいので気を付けましょう。

 ヤブニッケイはかつて薬や香料に有用され、長崎では解熱・鎮痛・健胃に薬効のある樹皮を民間薬として販売していました。また必須脂肪酸オメガ3の含有割合が多く、糖尿病の予防・改善に向くインスリン様物質のMHCPが含まれるという報告も見られます。

 お勧めの使い方は、葉を採取した後によく乾燥させてからお茶にする他、月桂樹(ローリエ)代わりに煮込み料理の風味付けにもなります。乾燥パウダーにして塩と混ぜたヤブニッケイソルトはお料理の幅が広がりますし、小豆あんとの相性も抜群ですので、おはぎやぜんざいの隠し風味にぴったりです。

 香り良くつややかな葉を持つ常緑樹・ヤブニッケイは、神仏にささげるより代としても重宝されます。宮古島の奇祭「パーントゥプナハ」では、厄払い役の女性がヤブニッケイを両手に集落内を練り歩き、一方で同島の別地区では神聖な水場のヘドロを全身に塗り、人に飛び付いたり家に上がり込んだりするそうです。ヤブニッケイの芳香とヘドロの悪臭、真逆の嗅覚が邪をはらう風習は何とも興味深く、印象に残ります。

 

 

枝ごとお風呂に入れると入浴剤に

 

 

 

植物民俗研究家/一般社団法人和ハーブ協会副理事長 平川 美鶴(ひらかわ みつる)

8月2日“ハーブの日”生まれ。全国各地の足元の植物と人のつながりを訪ね、日本人らしい生き方や感性を探求。講演、執筆、ものづくり、フィールド案内、実践ワークショップ、地域創生プログラムなど幅広く携わっている。著書に『和ハーブのある暮らし』(エクスナレッジ)など。