ほっと一息
2025.09.24
みんなのネットリテラシー講座
JA広報通信2025年9月号
成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト●高橋暁子
証券口座乗っ取り被害 どう対策する?
証券口座を乗っ取られ、株を勝手に売買されてしまう被害が続いています。被害の実態と対策について解説します。
◎拡大する証券口座乗っ取り被害
金融庁によると、2025年1月から6月の不正取引の累計件数は7139件、売買額は5710億円です(2025年7月7日現在)。
実在する証券会社のウェブサイトを装ったメールなどを送り、誘導した先のフィッシングサイトやフィッシングアプリ、悪意あるソフトウエア「マルウエア」などでID・パスワードを盗み、アカウントに不正アクセスします。ユーザーが所持している株式を勝手に売却し、代わりに特定の株を購入して株価を操作するという手口です。被害に遭ったユーザーは、資産である株を意図せず失い、不要な株が手元に残ることになってしまいます。大切な資産を失う上、被害額も大きく、大きな問題となっているのです。
◎ブックマークか公式アプリ利用、多要素認証も必須
偽の証券会社のサイトは、本物とそっくりで見た目では気付くことができません。利用する証券会社のサイトへのアクセスは、ブックマークまたは公式アプリ経由で行い、メールなどのリンクはクリックしないようにしましょう。
このような被害が相次いだため、多くの証券会社がワンタイムパスワードなどの複数の手段で本人確認をする多要素認証を必須化しているので、必ず設定を行っておきましょう。口座の状況は小まめに確認するようにして、不審なウェブサイトに情報を入力した恐れがある場合はすぐに証券会社に連絡するようにしてください。
一部の証券会社では、不正に売買された株式などを被害に遭う前の状況に戻す原状回復措置を実施したり、全額補償を視野に検討しているところもあります。しかし、現状では必ずしも全額補償されるとは限らないため、必ず対策をしてください。
成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
高橋 暁子(たかはし あきこ)
SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。NHK「あさイチ」「クローズアップ現代」などテレビ出演多数。SNS関連の著書は20冊以上。