ほっと一息
2025.09.08
なくそう食品ロス
JA広報通信2025年9月号
食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美
世界食料デー 食品ロスについて考えよう
10月16日は世界食料デー。1981年に国連が定めた、世界の食料問題を考えるための日です。10月の1カ月間は「世界食料デー月間」とされています。
日本で議論されてきた食料問題といえば米でしょう。故・井上ひさしさんが執筆した著書に『コメの話』(新潮社)があります。初版は1992年ですが内容は今でも古びていません。例えば「(米は)決して取れ過ぎていない」「日本の米の争奪戦が始まる」「日本のおいしい米を食べられるのは、きっとお金のある人」など、30年以上前に書かれたとは思えないほど現在の日本に当てはまります。
そんな米作りを支えてきたのは家族経営の小規模農家です。FAO(国連食糧農業機関)によれば、世界の食料生産額の8割以上が家族農業によるものです。国連は2019〜2028年の10年間を「家族農業の10年」とし、小規模農家や家族農業を守る政策を加盟国や関係機関に促しています。
EU(欧州連合)では全予算の3分の1を農業に充て、そのうちの7割を農家への直接補償、3割を農村振興に振り分けて農業を守っています。一方、日本では今後10年で農家が半減するにもかかわらず危機感が少ないといわれています。
農林水産省は2025年6月6日、全国スーパーマーケット協会に対し、米飯類をはじめとする食品ロス削減推進徹底の通知を出しました。6月13日には農林水産大臣が、さらに広い対象者へ同様のメッセージを発しました。今ある食料を捨てないことは、食料自給率が61%(生産額ベース・2023年度)を海外からの輸入に依存する日本にとって重要です。
気候変動や紛争により食料危機が叫ばれる昨今では、今ある食料や資源を無駄にしないことが大切で、持続可能な方法ではないでしょうか。
食品ロス問題ジャーナリスト
井出 留美(いで るみ)
株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。