ほっと一息

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2025.08.22

知って納得! 税金講座

JA広報通信2025年8月号

JA全中・JA全国相続相談・資産支援チーム 顧問税理士●柴原 一

相続税申告時の葬儀費用の控除

 

 コロナ禍を経て故人を見送る葬儀の形は多様化しています。相続税の計算では、葬儀費用は相続財産から控除できますが、どこまでを葬儀費用として計上すべきかは「相続税法基本通達」(国税庁ウェブサイトなどに掲載)が指針となります。
 具体的には、通夜・告別式のために葬儀会社に支払った費用や通夜・告別式に係る飲食費用、葬儀を手伝ってくれた人などへの心付け(社会通念上相当と認められる金額)、寺・神社・教会などへ支払ったお布施、戒名料・読経料など、通夜や告別式当日に参列者に渡す会葬御礼の品代、火葬・埋葬・納骨にかかった費用などが計上できます。
 さらに、例えば山や川や海で遭難した場合などに民間(例:地元の山岳愛好家や猟友会、漁師など)に捜索を依頼した際の実費負担や、自宅から離れた所で亡くなったときに、陸路や空路で遺体を運ぶための費用も葬儀費用に含まれます。
 反対に葬儀費用として計上できないものもあります。解剖をした場合の費用は葬儀費用として計上できません。また、香典返礼費用は、そもそも香典が相続財産に含まれないため、その返礼費用も控除しないという考え方になり、葬儀費用として計上できません。なお、会葬御礼の品代との区別は、葬儀費用の領収書や明細書の内訳や相続人への聞き取りにより判断します。
 お墓にまつわる費用も、葬儀後のことであるため計上できません。被相続人が生存中に墓碑を買い、その代金が未払いの場合も、未払い代金を債務として計上できません。また初七日、二七日、四十九日などの法会費用も計上できません。
 ただし、近年、初七日を告別式と同日に行うことが増えています。その際に葬儀会社からの請求で内訳が区分されていない場合は、葬儀費用に含めるという考え方もあります。四十九日法要に合わせて行う納骨の費用は、葬儀費用に該当します。
 いずれの場合も、領収書やレシートを保管しておくこと、それらがないものは必ずメモを残すことの2点がポイントです。