ほっと一息

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2025.06.04

おうちでも実践!食中毒対策

JA広報通信2025年6月号

監修:小嶋絵美(Love Table Labo.)

イラスト:藤田倫央

 

おうちでも実践!食中毒対策

食中毒というと飲食店での食事が原因と思われがちですが、毎日食べている家庭の食事でも発生しています。
普段、当たり前にしていることが、思わぬ食中毒を引き起こすことがあるのです。
家庭の食事作りにおける食中毒対策のポイントをチェックしてみましょう。

 

 

食中毒を引き起こす主な原因は細菌とウイルス

 細菌もウイルスも目には見えません。細菌は温度や湿度などの条件がそろうと食べ物の中で増殖し、その食べ物を食べることにより食中毒を引き起こします。一方、ウイルスは、細菌のように食べ物の中では増殖しませんが、食べ物を通じて体内に入ると、人の腸管内で増殖し、食中毒を引き起こします。また、ウイルスは低温や乾燥した環境内で長く生存します。

 

 

細菌とウイルスは食材や自分の手に

 食中毒の原因となる細菌やウイルスは、私たちの周りの至る所に存在しています。
 肉や魚などの食材には、細菌やウイルスが付着しているものと考えましょう。また、いろいろな物に触れる自分の手にも、付着していることがあります。細菌やウイルスが付着した手を洗わずに食材や食器などを触ると、手を介してそれらにも付着してしまいますから、特に注意が必要です。
 きれいにしているキッチンでも、細菌やウイルスがまったくいないとは限りません。食器用スポンジや布巾、シンク、包丁、まな板などは、細菌が付着・増殖したり、ウイルスが付着しやすい場所といわれています。

 

 

 

食中毒対策の三大原則

 食中毒を防ぐためには、細菌の場合は、細菌を食べ物や調理器具に「付けない」、付着した細菌を「増やさない」、付着した細菌を「やっつける」が原則です。

 

 

付けない:洗う・分ける

 食中毒の原因菌やウイルスを食べ物に付けないように、小まめに手を洗いましょう。
 生の肉や魚などを切った包丁やまな板などの器具から、加熱せず食べる野菜などへ菌が付着しないように、使用の都度きれいに洗い、できれば加熱処理しましょう。
 加熱しない食材を先に取り扱うのも一つの方法です。焼き肉などの場合には、生の肉をつかむ箸と焼けた肉を取り分ける箸は別のものにしましょう。食品の保管の際にも、食品に付いていた細菌が付着しないよう、密封容器に入れたり、ラップをかけたりすることが大事です。

 

 

増やさない:低温で保存する

 細菌の多くは高温多湿な環境で増殖が活発になりますが、10度以下ではゆっくりとなり、マイナス15度以下では増殖が停止します。食べ物に付着した菌を増やさないためには、冷蔵庫などで低温保存することが重要です。なお、冷蔵庫に入れても、細菌はゆっくりと増殖しますので、冷蔵庫を過信せず、早めに使い切ることが重要です。

 

 

やっつける:加熱処理

 ほとんどの細菌やウイルスは加熱によって死滅しますので、肉や魚はもちろん、野菜なども加熱して食べれば安全です。特に肉料理は中心までよく加熱することが大事です。中心部を75度で1分以上加熱することが目安です。
 布巾や包丁、まな板などの調理器具にも、細菌やウイルスが付着します。特に肉や魚、卵などを調理した後の器具は、洗剤でよく洗ってから、熱湯をかけておきましょう。塩素系漂白剤の使用も効果的です。

 

 

ウイルスの場合はさらに二原則

 

 

持ち込まない:健康状態の把握・管理

 日頃から健康状態の把握や健康管理を行い、嘔吐(おうと)や下痢の症状がある場合などは調理を行わないようにしましょう。

 

 

広げない:手洗い、定期的な消毒・清掃

 ウイルスが調理場内に持ち込まれても、それが食品に付着して口から体内に入らなければ食中毒に至ることはありません。重要なのは、小まめな手洗いと、布巾や包丁、まな板などの調理器具を洗剤でよく洗った後に熱湯消毒を行うことです。

 

 

食中毒対策の三大原則

 

付けない
手洗い
調理器具の洗浄、消毒

 

増やさない
適切な温度での保存
調理後は速やかに食べる

 

やっつける
加熱処理

 

 

食中毒を防ぐ六つのポイント

 

 

ポイント1 食品の購入
●表示のある食品は、消費期限などを確認して購入しましょう。
●購入した食品は、肉汁や魚などの水分が漏れないようにビニール袋などにそれぞれ分けて包みましょう。できれば保冷剤(氷)などと一緒に持ち帰りましょう。
●生鮮食品などのように冷蔵や冷凍など温度管理の必要な食品の購入は買い物の最後にして、購入したら早めに帰るようにしましょう。

 

 

 

ポイント2 家庭での保存
●冷蔵や冷凍の必要な食品は、持ち帰ったらすぐに冷蔵庫や冷凍庫に入れましょう。
●冷蔵庫や冷凍庫の詰め過ぎに注意しましょう。目安は冷蔵庫や冷凍庫の収納量の7割程度です。
●冷蔵庫は10度以下、冷凍庫はマイナス15度以下に維持することが目安です。

 

 

 

ポイント3 下準備
●ごみは小まめに捨てましょう。
●タオルや布巾は清潔なものと頻繁に交換しましょう。
●井戸水を使用している家庭では、水質に十分注意してください。
●小まめに手を洗いましょう。ハンドソープを使い1回30秒が目安です。
●生の肉や魚などの汁が、果物やサラダなど生で食べるものや調理の済んだ食品にかからないように注意しましょう。
●生の肉や魚を切った包丁やまな板は洗剤でよく洗い、熱湯をゆっくりかけてから使うことが大切です。
●冷凍食品などの解凍は、冷蔵庫の中や電子レンジで行うと良いでしょう。

 

 

 

ポイント4 調理
●手を洗いましょう。
●加熱して調理する食品は十分に加熱しましょう。ほとんどの細菌を抑えることができます。中心部の温度が75度で1分間以上加熱することが目安です。調理を途中でやめるときは冷蔵庫に入れ、再開するときは、十分に加熱しましょう。
●電子レンジを使う場合は、電子レンジ用の容器、ふたを使い、調理時間に気を付けましょう。熱の伝わりにくい食品は、時々かき混ぜることも必要です。

 

 

 

ポイント5 食事
●食事の前には手を洗いましょう。
●清潔な手で、清潔な器具を使い、清潔な食器に盛り付けましょう。
●調理前の食品や調理後の食品は、室温に長く放置してはいけません。

 

 

 

ポイント6 残った食品
●残った食品を扱う前にも手を洗いましょう。残った食品はきれいな器具、皿を使って保存しましょう。
●残った食品は早く冷えるように浅い容器に小分けして保存しましょう。
●残った食品を温め直すときも十分に加熱しましょう。目安は75度以上です。
●時間がたち過ぎたら、思い切って捨てましょう。
●ちょっとでも怪しいと思ったら、口に入れるのはやめましょう。

 

 

食中毒かなと思ったら……
嘔吐や下痢の症状は、原因物質を排除しようという体の防御反応です。自分の判断で市販の下痢止めなどの薬をむやみに服用しないようにして、早めに医師の診断を受けましょう。

※厚生労働省の資料を基に基本的な食中毒対策を掲載しています。
 調理環境・健康状態などによっては全ての食中毒を防げるとは限りません。