ほっと一息

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2025.05.23

資産管理の法律ガイド

JA広報通信2025年6月号

JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎

親族法について その21

 

 今回は認知の無効について説明します。
 前回、未成年の子を認知するにはその子や子の母の承諾は不要と説明しました。しかし、その認知が事実に反しているときには、認知無効の訴えの提起が可能と説明しました。
令和4年の法改正では、血縁関係がないことを理由とする認知無効の訴えの条文を設立し、子(または子の法定代理人)、認知をした者、子の母には認知無効の訴えができる旨を規定しています。認知をした者も認知無効の訴えを提起できるのは何かおかしな感じがしますが、認知に至る諸事情を考慮してのようです。
 ただ、この訴えには期間の制限があります。
 子(または子の法定代理人)のときは、子(または子の法定代理人)が認知を知ったとき、認知した者は認知のとき、子の母は子の母が認知を知ったときから、それぞれ7年以内とされています。
 このうち子について、認知後に認知した者と継続して同居した期間が3年を下回るときは、21歳に達するまでの間は、7年という期間に関係なく認知無効の訴えを提起できるとされています。この例外は、子による訴えを前提としていますので、子の法定代理人による訴えについては原則の7年ということになります。なお、子による認知無効の主張が認知をした者による養育の状況に照らして認知をした者の利益を著しく害するときには、この訴えは認められないとされています。
 この認知無効により認知が無効ということになると、血縁関係のない者に対して生活のための費用を支出していたことになるのですが、改正法では子の監護に要した費用については、当事者である子は償還義務を負わないとされました。
 次回は、子の氏の説明をします。