ほっと一息
2025.05.09
なくそう食品ロス
JA広報通信2025年5月号
食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美
災害用備蓄で食品ロス削減
災害に備えて食品を備蓄していますか? 朝日新聞2025年2月22日付「be」アンケートでは、備蓄している防災用品の1位は水、3位は保存食・非常食でした。
19年発表の総務省調査によれば、国の行政機関の42%が、備蓄食品の入れ替え時にそれまで保存していた備蓄食品を全て廃棄していました。省庁も同様に捨てていたのです。
ところが食品ロス削減推進法が施行された19年、農林水産省は省庁として初めてNPOなどに備蓄食品の寄付を行いました。備蓄の入れ替え時に役目を終えた食品を有効活用することにしたのです。翌20年にも寄付しました。
農林水産省を皮切りに、今ではほとんどの省庁が、備蓄食品の入れ替え時に食品を寄付するようになりました。食品ロスの削減と生活困窮者支援が目的です。
農林水産省の公式サイトには、賞味期限切れも含め、寄付できる食品がリスト化された「国の災害用備蓄食品の提供ポータルサイト」があります。
ところで、備蓄食品の寄付は賞味期限が過ぎていても大丈夫なのでしょうか? 東京農業大学で長年食品の保存の研究をしてきた徳江千代子先生は、賞味期限が過ぎても食べられるものの例として缶詰を挙げています。調べた中では、調味液が濃いものや果物のシロップ漬けなど、最長で15年持つものがありました。
家庭で備蓄しておくと良い缶詰は、魚、豆類、果物、パンなどです。災害時の支援食は炭水化物に偏りがちですので、魚や豆類などタンパク質が取れる缶詰を常備すると良いでしょう。普段から使っては買い足すローリングストック法で保存すれば、在庫が循環していくので、賞味期限切れを防ぐことができます。
一般的に賞味期限は「おいしさの目安」であり、品質が切れる日ではありません。ただ、いったん開封したら賞味期限は無効になることにも注意してくださいね。
食品ロス問題ジャーナリスト
井出 留美(いで るみ)
株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。