ほっと一息

ほっと一息

2025.02.17

介護ハンドブック

JA広報通信2025年2月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

親の介護と終活に備えるために

 

 「親にどう終活を促せばいいか」という質問を頂くことがあります。親が終活に積極的だと、今後の介護や相続に備えた対策が取りやすいです。しかし、それほど関心を持っていない親に対して介護や死後の話題を切り出すのは「親の機嫌を損ね、関係性が悪化するのではないか」と不安になることでしょう。

 

■ 1人の人間として関心を持つ
 残念ながら、親に今すぐ終活を始めてもらえるような、魔法の言葉はありません。むしろ、根気強いコミュニケーションが求められます。
 でも、安心していただきたいです。終活の話題は深刻なものばかりではありません。例えば、好きな音楽のジャンル、趣味、交流関係、好物、思い出の場所など、親の人となりやこれまでの人生について話を聞くことも終活につながります。
 私自身、母が病で倒れて意識不明になった際、「もしものときに、どこまで治療するか」と医師に尋ねられ、「母が本当に望んでいることは何だろう?」と悩みました。そして私は、1人の人間としての母の姿をそれまでほとんど知らなかったことに気付きました。

 

■ 気軽な話題から人となりを知っていく
 自分の体験から、私は「終活の話を切り出す前に、ご両親の趣味や友人関係について話を聞くことから始めてみませんか?」とお伝えしています。子どもの頃の思い出や印象深いエピソードなどを聞くことは、両親の価値観や死生観を知るきっかけになるだけでなく、これまで見たことがなかった親の一面を知り、心の距離が縮まることもあります。
 終活の目的は、相続や老後の資金問題を解決することだけではありません。家族との相互理解や関係性を深め、より充実した生活を送ることも、大切な目的の一つです。終活の話題を切り出せずに迷っている方は、まずは趣味や交友関係の話題から対話を始めてみましょう。また、子の自分が先に終活に取り組み、その体験を共有するのもいいですね。