ほっと一息
2025.02.13
なくそう食品ロス
JA広報通信2025年2月号
食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美
食品ロスを減らして温室効果ガスも削減
2024年の夏は暑かったですね。23年の夏も暑く、長野県で米や野菜を作っている筆者の義父母は「暑過ぎてサトイモが小さくなっちゃった」と嘆いていました。
欧州連合(EU)の気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」は、24年の世界平均気温が23年を上回り、過去最高になる見通しだと24年10月に発表しました。
過剰な暑さは農産物の生育に影響を及ぼします。23年産の新潟県産「コシヒカリ」は胚乳の一部もしくは全部が白く濁る「白未熟粒」が増え、等級が落ちました。海水温が高く魚が死んでしまう現象も起きました。この暑さの一因が「食品ロス」だと言ったら、意外に思うのではないでしょうか。
気候変動の一因となる温室効果ガスを世界で最も排出している国の第1位は中国、第2位が米国です。しかし、世界中の食品ロスを合計すると、この二つの国に続く第3位の温室効果ガスの排出量となるのです。
農業や食品産業など、世界の食料システムから排出される温室効果ガスは全体の30%以上に及びます。
世界200人近くの研究者が関わったドローダウンプロジェクトでは、地球温暖化を逆転させるベスト100の方法が検証されました。二酸化炭素の削減量や費用対効果などで順位付けしたところ、100位中、3位になったのが「食品ロス削減」でした。26位の「電気自動車」や43位の「飛行機の燃費向上」より、食品ロス削減の方が順位が高かったのです。それくらい、気候変動と食品ロスは大きく関連しています。
3月23日は世界気象デー。24年のテーマは「気候変動対策の最前線」でした。農畜水産物の生育を健全に保ち、自然災害を少しでも減らすために、食べられるのに捨てられる食品ロスをなくしていきましょう。
食品ロス問題ジャーナリスト
井出 留美(いで るみ)
株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。