ほっと一息
2025.01.30
資産管理の法律ガイド
JA広報通信2025年1月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎
親族法について その17
今回は嫡出の否認について説明します。
嫡出の否認とは、前回説明した嫡出の推定の条文(民法772条)によって父が定められるときに、子が嫡出であることを否定することをいいます。
今までは嫡出の否認ができる人は夫のみとされており、嫡出の否認の訴えを提起できる期間も、夫が子の出生を知ってから1年とされていました。
しかし、前回説明したように嫡出の推定の条文が改正されたことやその他の理由から、嫡出否認をできる者の範囲と提訴期間が変更されることとなりました。
この変更については、令和6年4月1日から施行され、同日以後に生まれた子に適用されますが、令和6年4月1日から1年間に限っては、令和6年4月1日より前に生まれた子やその母も、嫡出否認の訴えの提起ができることとされています。
嫡出否認の訴えが認められると、嫡出子、つまり婚姻関係にある男女間で生まれた子の推定を否定できるという効果が生じます。簡単にいえば、夫の子と推定されないということです。
この嫡出否認の訴えですが、夫、子および母の他、前の夫も申し立てができるようになりました。
子や母が申し立てをすることができるとしたのは、夫のみしか申し立てができないとすると、夫と子の間に生物学上の関係がないのに、夫が嫡出否認を主張しないと、子や母は夫の子でないと主張することができなくなってしまい、このことを避けるため、母が出生届を提出しないということがあったためです。
また、前の夫にも申立権が認められたのは、前回説明したように、再婚後の夫の子と推定されるケースのとき、その子は前夫の子である場合、前夫にも今の夫の子でないと主張する機会が必要だからです。
次回も説明を続けます。