ほっと一息

ほっと一息

2024.12.13

介護ハンドブック

JA広報通信2024年12月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

デイサービスが楽しそうなのに口では嫌がる義母

 介護の相談では「要介護者が介護保険サービスを嫌がる」という相談がトップ3に入ります。何とか利用にこぎ着けたものの、サービス利用初期は本人も緊張し、気疲れしてしまうものです。

 

 

■ 本人の気持ちが揺れ動いて……
 九州在住のMさん(女性・60代)は、義母(90代)と夫(60代)との3人暮らしです。義母は腰と膝が悪く、歩行には手助けが必要です。最近では物忘れの症状も見られます。
 Mさんは1年かけて義母を説得し、介護保険の申請を行いました。要介護1の認定が出た義母はデイサービスの利用を始めました。意外にも楽しんでいる様子に、Mさんも夫も安心しました。しかしある日、義母は「二度と行かない」と言い出したのです。驚いた夫が「いつも楽しいと言ってるじゃない」と言うと、義母は「あんたたちに気を使ってるのよ!」と返してきました。夫妻は、どう対応すべきか悩んでしまいました。

 

 

■ 説得せず、まずは話を聞く
 対応策は二つあります。まず「行きたくない」という気持ちをいったん受け止め「どんなことが心配なの?」と理由を尋ねてみましょう。理由が現実的でなくても説得せず「それが気になるのね」と、ただ気持ちを受け止めるだけで十分です。
 二つ目は、本人の機嫌がいいタイミングで、「何が楽しかった?」と、ポジティブな体験を話してもらうことです。もし「何もない」と言われたら「スタッフの人、笑顔で感じ良かったよね」など、家族が感じたポジティブな印象を伝えたり、施設からの連絡帳を見ながら「こんな体験をしたんだね!」と振り返ってみましょう。サービス利用への不安を和らげる効果があります。

 大切なのは、「行く気になってもらおう」「説得しよう」という気持ちをいったん脇に置くことです。しかし、相手の話をじっくり聞くには、介護者自身に心身の余裕が必要です。まずは自分がくつろげる時間をつくり、落ち着いて話を聞く時間を取りましょう。