ほっと一息
2024.11.12
介護ハンドブック
JA広報通信2024年11月号
介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子
無理を重ねる主介護者が心配なときは
私の元には「同居介護をしている家族が心配」というご相談も寄せられます。サービスの利用や介護者自身の休息を促しても聞き入れず、介護にのめり込む家族の姿を見ると、危うさを感じるものです。
■ 施設入居の提案が逆効果に……
東京在住のKさん(女性・50代)は、都内で夫と子どもと3人で暮らしています。関西の実家では、脳梗塞で車いす生活になった母親を妹が同居介護しています。Kさんは月に1度、実家に戻って妹のサポートをし、電話やメッセージアプリで相談に乗ってきました。
最近、妹から「疲れた。もう死にたい」といったメッセージが頻繁に届くようになりました。Kさんは、母親にイライラして八つ当たりするようになった妹の様子が気になっていたため、電話で「施設を考えた方がいい時期では?」と提案しました。すると妹は、「ひどい! これまで私がどれだけ頑張ってきたと思ってるの?」と声を荒げたのです。
■ 正しい提案でも受け入れるには順序がある
妹は心身の限界を感じながらも「もっと頑張らないと」と自分を奮い立たせていたのでしょう。そんな中、Kさんの言葉で現実を直視せざるを得なくなり、ショックが怒りとして爆発したのかもしれません。Kさんには、施設入居の話はいったんやめて、妹にねぎらいの言葉をかけ、頑張る理由を聞いてみること、ケアマネジャーに妹の様子を伝えることを提案しました。頑張り過ぎる介護者の多くが「努力が足りない」「自分の頑張りが理解されていない」と、孤独感で苦しんでいるからです。
1カ月後、妹から「ケアマネさんからショートステイの利用を提案されたの。申し込んでみようかな」と連絡が入りました。Kさんに自分の頑張りや大変さを理解されたと感じ、気持ちが変化したようでした。
まずは主介護者の心情に寄り添うことを意識してみてください。家族だけで説得しようとせず、ケアマネジャーや地域包括支援センターにも相談しましょう。