ほっと一息

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2024.10.03

資産管理の法律ガイド 親族法について その12

JA広報通信2024年8月号

JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎

 

 今回も離婚に際しての財産分与について説明します。
 婚姻後につくり上げた財産を清算するのが、財産分与の目的です。そのため、もともと所有していた財産(婚姻前から所有していた財産)については、原則としては財産分与の対象とはなりません。また、相続とか贈与を受けた財産も、婚姻とは直接関係のないものですので、財産分与の対象とはなりません。
 現在は夫婦とも仕事を持ち収入を得ていることが多いのですが、以前は専業主婦のケースも多かったと思います。こういうケースでは夫の収入で不動産を購入したり、夫名義の預貯金口座を作成したりしていました。このような場合、夫が外で働けるのは妻の協力があるからだとして、夫名義の財産も婚姻後に取得したのであれば、相続、贈与などでない限り、財産分与の対象とされています。
 ただ、不動産の場合、ローンを組んでいることが多いですが、不動産の価値がローンを上回るときは、その余剰分の価値を前提に財産分与を考えます。ローンの方が多いときは、原則としてその財産は分与の対象とはしません。
 しかし、例えば夫が家を購入したばかりの場合、ローンの方が多いケースが大半ですが、それでも妻がその家を財産分与してもらいたいと考えることがあります。ローン会社との契約内容を事前に確認して、夫名義の変更がローンに影響しないのであれば、対象家屋を財産分与で妻名義にすることは可能です。ただし、夫のローン付き(抵当権付き)の物件ですので、夫がローンを支払わないと対象家屋は競売となってしまう恐れがあります。また、夫がローンを支払うことで、本来の財産分与価格以上のものを妻が取得することになり、その余の財産分与に関しての配慮をするのが一般的です。

 

 次回も財産分与の説明をします。