ほっと一息

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2024.09.27

教えて! シニアのための ヘルスリテラシー

JA広報通信2024年8月号

参考資料:東京都医師会ホームページ
ヘルスリテラシーって何?
https://www.tokyo.med.or.jp/healthliteracy
イラスト:ゆきたけし

 

ヘルスリテラシーとは、健康や医療に関する正しい情報を入手し、理解して活用する能力のこと。
さまざまな疾患リスクが高まるシニア世代。生涯を通じて健康で充実した生活を送るために、ヘルスリテラシーを向上させましょう。

 

LESSON 1 高齢者が気を付けたいフレイルって何?

 

健康と要介護の中間の状態

 フレイルとは、心身の働きが弱くなり、健康と要介護の中間にある状態のこと。「つまずきやすくなった」「物忘れが気になる」「前より疲れやすくなった」などの症状が現れたら、フレイルのサインかもしれません。

 

フレイル予防と改善の3本柱

 フレイルはバランスの良い「食事」、適度な「運動」、人とつながる「社会参加」の三つを生活に取り入れることで、予防・改善することができます。
 食事は、メタボ対策からフレイル予防に切り替えることがポイント。野菜だけでなく、筋肉のもとになる肉や魚、卵、大豆製品の他、骨を強くする乳製品などを取るようにして、栄養状態を保つことが大切です。もちろん、しっかり食事を取るためには正しく歯磨きを行い、健康な歯を保つことも必要です。
 筋肉の衰えを防ぐため、ウオーキングなどの運動も習慣にしましょう。さらに、社会参加の機会が減ることは、フレイルになる原因の一つです。趣味やボランティアへの参加など、自分に合った社会活動を見つけると良いでしょう。

 

両手の親指と人さし指で輪を作る

利き足ではない方のふくらはぎの一番太い部分に当てる

 自分で手軽にフレイルをチェックできる1つの方法として、筋肉量を測る「指輪っかテスト」があります。筋肉が衰えていると指と足の間に隙間ができ、フレイルである可能性が考えられます。

 

 

LESSON 2 その腰痛、骨粗しょう症の骨折では?

骨も年を取ります

 骨粗しょう症とは、骨の量が減少することなどが原因で、骨折しやすくなる病気です。
 女性ホルモンには骨の新陳代謝のバランスを保つ働きがあるため、女性ホルモンの分泌が減る閉経後は骨の量が減少します。
 骨粗しょう症が進行すると、背骨や手首の骨、太ももや腕の付け根の骨が折れやすくなります。背中や腰が曲がって痛みがあったり、身長が縮んでいる場合は、骨粗しょう症によって背骨が圧迫骨折を起こしている可能性もあります。

 

 

食事と運動でコツコツ予防を

 骨粗しょう症は薬などで治療を行いますが、骨を増やす食事と運動による予防が重要です。骨作りに必要な乳製品や小魚、緑黄色野菜で、カルシウムを積極的に摂取してください。カルシウムの吸収を高める働きがあるビタミンDを含む、カツオやマグロ、卵、シイタケなども一緒に取りましょう。
 禁煙も有効です。アルコールやカフェインの取り過ぎにも注意しましょう。そして、定期的に病院で骨密度検査を受け、自身の骨の状態を把握しましょう。

コツコツ予防

 習慣的な運動も大切です。散歩や階段の上り下りを増やすのもお勧めです。適度な日光浴により体内でビタミンDが生成されます。

 

 

LESSON 3 知ってください肺炎の恐ろしさ

肺炎は特に高齢者が注意すべき病気

 肺炎とは、肺に炎症が起きる病気です。肺炎になると、初めは喉の痛みや鼻水・鼻詰まり、せき、たんなどの症状が出て、進行すると高熱や呼吸困難、全身の倦怠(けんたい)感、悪寒、胸の痛みなどが現れます。風邪だと思って放っておくと、重症化することもあります。

 

 

ワクチン接種で肺炎予防を

 日常で起こる肺炎の原因菌として、最も多いのが「肺炎球菌」です。これは肺炎に加え、気管支炎や敗血症などの重い合併症を引き起こすこともあるリスクの高い菌ですが、ワクチン接種で予防することができます。
 ワクチン以外にも、普段から免疫力を高めるために、規則正しい生活やバランスの良い食事、質の良い睡眠を心がけましょう。ウイルスを体内に入れないよう、うがいや手洗い、マスクの着用も大切です。「食欲がない」「息切れがする」などの不調を感じたら、必ずかかりつけ医に相談しましょう。

 

ワクチンで予防しよう!

 肺炎球菌ワクチンは高齢者を対象に定期接種になっており、1回の接種で5年以上の効果が続くことが認められています。

 

 

 

LESSON 4 え、まさか!この私が認知症?

日常生活に支障が出たら要注意

 認知症とは、さまざまな原因で脳細胞に障害が起き、認知機能が低下して、日常生活に支障が出る状態のこと。認知症を引き起こす病気は数多くありますが、脳細胞の変性が原因の、アルツハイマー病、レビー小体病、前頭側頭変性症の他、脳卒中などの脳血管の病気による認知症も多いといわれています。
 さらに、甲状腺機能低下症やビタミンB1欠乏症、水頭症などのように、治療によってある程度治癒が期待できる病気もあります。
 認知症の主な症状は、記憶障害や理解力・判断力の低下などです。さらに不安感、痛みなどの不快感、居心地の悪さなどのさまざまな環境要因が加わることで、落ち着きがなくなる、怒りっぽくなる、妄想を抱くといった「行動・心理症状(BPSD)」が加わります。

 

 

加齢による物忘れと認知症はどう違う?

 加齢による物忘れと、認知症による物忘れは、区別するのが難しいものですが、次のような症状が見られたら、認知症のサインかもしれません。

●物忘れをしていることに気付けなくなる
●食事の内容だけでなく食べたこと自体を忘れるなど、体験したこと全てを忘れる
●いつも捜し物をしていて、誰かが盗んだと思ってしまう

 

 認知症を引き起こす病気の中には薬や手術で治すことができるものもありますが、アルツハイマー病などは薬で進行を遅らせることはできても、現状では完全に治すことはできません。行動・心理症状を悪化させないような心の支援も重要です。
 生活習慣病の予防や禁煙は認知症予防にもつながります。バランスの良い食事を取り、適度な運動を習慣にしましょう。趣味の活動などを楽しみ、積極的に人と交流するよう心がけてください。

何だっけアレ?あー、アレね

 自分だけでなく、家族や友人に変化を感じたら、かかりつけ医や「物忘れ外来」に相談を。

 

 

LESSON 5 そのドキドキ、心不全かも?

自覚症状が少ない高齢者の心不全

 心不全とは、心臓のポンプ機能が低下して、全身の臓器に十分な血液を送り出せなくなった状態です。
 心臓の機能は加齢に伴い低下するため、高齢者ほど注意が必要です。症状としては、動悸(どうき)や息切れ、呼吸困難、体重の増加、むくみ、疲労感などが挙げられます。しかし高齢者では、はっきりした自覚がない場合も少なくありません。

 

 

息切れや急な体力低下に注意

 心不全の早期発見のポイントは、「これまで普通にできていた動作ができなくなった」「急に体力が落ちた」「急に体重が増えた」「動悸や息切れが増えた」などの症状です。こうした症状が現れたら我慢せずに、医療機関を受診しましょう。
 日常生活では、かかりつけ医と相談して、塩分や水分の摂取に気を付けましょう。また、過度の飲酒や過食、長時間の入浴にも注意が必要です。そして、喫煙は控えましょう。

「年のせい」と思い込んで、そのままにしていませんか?

少し歩いただけで息切れがする

むくみ

体重増加

 自覚したとしても「年のせいだから」と我慢してしまう傾向があり、発見が遅れることもあります。

 

 

LESSON 6 定年後こそヘルスリテラシー

定年後は疾患リスクが上昇する?

 定年後は、自分で自分の健康を守ることがこれまで以上に大切になります。病気を未然に防ぐためには、定期的に身体状態をチェックすることが大切であり、その機会を逃すことは、病気発見の遅れにつながる可能性があります。ヘルスリテラシーを高めて、健康で充実した毎日を送りましょう。
 家族以外の人と接する機会が減ったり、長年続けてきた生活リズムが変わったりすることで、精神的な不調につながることもあります。ずっと仕事中心の生活で、定年後に地域の中での人間関係を築きにくいような方たちを対象に、市民グループへの参加の機会を提供している自治体もあります。興味がある方は、ぜひ、問い合わせてみてください。