ほっと一息
2024.08.09
資産管理の法律ガイド 借家契約について(10)
JA広報通信2010年8月号
JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎
今回は、相続人がいない借家人が死亡した場合についてです。
身寄りのない借家人が死亡し、相続人がいない時は、借家権の相続人がいないことになります。ただし、死亡した借家人に相続人がいるか否かについては、戸籍を調べるしかありません。他人の戸籍は原則として調べることはできませんし、相続関係の調査は知識が必要です。弁護士など専門の方に委任すべきでしょう。
この場合、家財が建物に残されたままだとしても、貸主は勝手に処分してはいけません。家財も死亡した借家人の財産ですので、その財産がある以上、その財産を処分するには、相続財産管理人の選任を申し立てることになります。
そして、この相続財産管理人を相手方として、残された家財の処分を請求することになります。
しかし、借家人と事実上の夫婦や養親子の関係にあった同居人がいる場合、その同居人が反対の意思表示をしない限り、借家権を承継することができます。借家権を承継する時は、賃料支払いなどを含めた権利義務を承継することとなります。
なお同居人がいない場合、貸主が建物の明け渡しを求めることは、費用や時間がかかってしまいます。契約に当たっては、相続関係を含めて借家人の調査を怠ることがないようにすべきでしょう。保証人をつけることができても、法的には保証人に家財の処分権限はありませんので、注意してください。