ほっと一息

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2024.01.18

永山久夫の健康万歳! ネギは寒い季節に大活躍

JA広報通信2024年1月号

食文化史研究家・日本の長寿食研究家●永山久夫

 

 昔から、「風邪のひき始めにネギの薬汁」といわれ、実際に役立ってきました。ネギは発汗作用もあり、体を温めて免疫力や自然治癒力を強くしてくれるからです。

 このため、冬の寒期に流行する風邪などの感染症を防ぐ知恵が発達し、ねぎ汁やねぎがゆなどが好まれるようになりました。ねぎ汁にしても、ねぎがゆにしても、ネギから出る甘みで素朴なうまみがあり、汗ばんできて元気が体中に出てきます。

 奈良時代の天平7(735)年には、天然痘が国中にはやって死者も出ましたが、ネギを食べていた者は、感染しても軽く済み、大部分は救われたと伝えられています。平安時代の『医心方(いしんぽう)』という有名な医術書には、ネギの効能について「悪寒、発熱、中風、発汗、喉不調を治すのに効がある」と書かれています。

 ネギには強い保温作用があり、さらに葉の部分にはビタミンCやベータカロテンが多く、いずれも風邪の予防や風邪退治には理想的な成分といってよいでしょう。

 昔からよくいわれる「うどん屋の風邪薬」というのは、青ネギを刻んだ薬味のことを指しています。

 江戸時代になると、「ネギは台所の風邪薬」となり、常備されるようになっていきます。

 同時代の『本朝食鑑』には、「風邪や頭痛のときに生ネギでおかゆを作り、熱いうちに食べるとよく汗が出る」とあります。発汗作用や保温効果を述べ、風邪を治す妙薬といっています。

 ネギはニンニクやニラなどと同じユリ科の香辛野菜で、共通して鼻につんとくる刺激臭と辛みがあります。その成分は硫化アリルでビタミンB1の吸収を高め、疲労回復や脳の老化防止などの働きがあります。硫化アリルには、殺菌作用や健胃、発汗、利尿など幅広い効能があることも判明しています。

 

 

 

食文化史研究家・日本の長寿食研究家 永山 久夫(ながやま ひさお)

1934年福島県生まれ。食文化研究所、綜合長寿食研究所所長。古代から明治時代までの食事復元研究の第一人者。長寿食や健脳食の研究者でもあり、長寿村の食生活を長年にわたり調査している。