きくちのまんま新聞

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地域発未来へ 町・JA・地域農家一体でサツマイモ基腐病封じ込めに成功

熊本県大津町は県内最大のカンショの生産地。近年全国に広がりを見せている「サツマイモ基腐病」防除のため、行政、JA、生産者が一体となり「大津町甘藷基腐病対策協議会」を立ち上げ、病気のまん延を防いでいます。カンショの一大産地として、町の特産品を守るため、力を結集して安定生産を実現しています。

サツマイモ基腐病は2018年に国内で初確認され、2020年には熊本県内でも確認。同町のカンショ農家は不安と危機感を抱きました。JA菊池甘藷部会は病害に対しての講習会を複数回開き、育苗床の土壌消毒からさし苗の消毒まで、一連の対策を部会員全戸で取り組みました。しかし「管内には未共販農家も多く、JA共販出荷者だけでは産地を守ることは出来ないと感じた」と同部会事務局の西淳史指導員は話します。

 

そこでJAおよび部会は大津町へ出向き、管内全ての甘藷農家を対象とした組織の設立を進言。2021年2月に「大津町甘藷基腐対策協議会」が設立されました。県や町、JA部会、各地区の農業代表者で構成し、会長には同町産業振興部長が、副会長にはJA菊池大津中央支所長を充ています。管理ポイントに合わせた対策会議や同行巡回等に取り組み、地域が一つとなりました。県北広域本部と連携して対策パンフレットを作成し、同町の全カンショ生産農家や関係機関に配付し、意識統一を図っています。

 

菊池地域管内ではこれまで数件の症例が見つかっていますが、いずれも早期発見により連続発生していません。出荷にも影響なく封じ込めに成功しています。発生を確認した生産者は「皆で講習会に参加し、学んでいたおかげで注意深く観察し早期発見できた。はじめはひどく落ち込んだが、JA職員や県の担当者が親身になって対応してくれたお陰で気持ちが落ち着き、対策への一歩が踏み出せた」と話しました。

 

産地としては生産者の高齢化や後継者不足の問題も抱えており、JA菊池甘藷部会では産地を守る対策も講じています。通常出荷とは別に、選別や出荷調整を簡略化した出荷に取り組み、出荷作業が困難となる定植期でも安定供給体制を実現し、数量・単価の値決め取引を開始しました。また、その年の収穫量や貯蔵量を基に土付き出荷にも取り組み、作業省力化による栽培面積の維持・拡大を図っています。同部会永田宏治部会長は「産地規模と販売価格の維持を図り、安定収入を確保したい。今後後継者や担い手達がカンショ生産者になりたいと思えるよう、将来への種まきを地域が一つとなってこれからも取り組んでいきたい」と力強く話しました。