ほっと一息

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2023.09.10

皆で仲良く100歳食 物忘れを防ぐ卵かけご飯

JA広報通信2009年9月号

食文化史研究家●永山久夫

 

 日本人の大好きな真っ白なご飯。

 そして納豆、生卵、刺し身、豆腐、大根おろし、野菜のおひたし。いずれも代表的な日本食であり、すべて食材の持ち味を味わう食べ方です。

 ご飯は白米を水だけで炊き上げたものですし、納豆は煮豆を納豆菌で発酵させただけ。刺し身は魚の生身を食べやすく切りそろえただけなのです。

 まさにこれらは「生(き)」の味なのです。 素材の「生(き)」の味を生かして食べるのは和食の最大の特徴で「生地料理」といいます。

 魚の生地料理を考えてみると、旬の脂が乗った魚ならば、刺し身にして食べるのが一番おいしいものです。新鮮な魚が一年中捕れる島国ならではの食文化といえます。

 そして日本料理の基本は「煮るは炙(あぶ)るにしかず、炙るは生にしかず」です。「煮た料理は焼いたものに及ばないし、焼いたものは生で食べるものにはかなわない」という意味で、結局は「生」が一番であるということでしょう。

 次のような川柳があります。 生卵 醤油の雲に 黄身の月  器に入れた生卵の黄身は満月であり、醤油(しょうゆ)はまるで雲のようだと言っています。欧米人はこのような食べ方を奇異に感じるようですが、立派な和食文化です。生卵とご飯を合わせた、まさに生地料理といえるでしょう。

 新米ご飯に生卵の黄身だけ載せ、醤油を垂らして食べます。極めて味わいが濃厚で、まるでウニご飯のようです。この黄身にはビタミンA、B1、B2、B12などがたっぷり含まれています。いずれも物忘れを防ぐ上で欠かせない成分。頭の老化防止のためにもおすすめです。