ほっと一息

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2023.08.12

アウトドアを楽しみながら キャンプ道具で防災対策

JA広報通信2023年8月号

寒川 一 (さんがわ はじめ)
1963年生まれ、香川県出身。

アウトドアライフアドバイザー。

東日本大震災や自身の避難経験を経て、災害時に役立つキャンプ道具の使い方・スキルを教える活動を積極的に行っている。

 

 

 

夏から秋、キャンプに出かけてみませんか?
アウトドアで過ごすための技術や知識は、災害などで避難した際にも確実に役立ちます。
キャンプに行けなくても、キャンプ道具について知っておくことをお勧めします。

アウトドアでの技術がなぜ防災に役立つの?

 近年、空前のキャンプブームが続いています。家族や友人と、あるいは1人でのソロキャンプを楽しむ人たちが増え、それに合わせてキャンプ道具もかなり進化してきました。
 寝る場所や電源なども整ったキャンプ場もありますが、基本的なキャンプでは、野外での住まいとなるテントを設営し、食事や温かい飲み物を得るために水を運んできて火もおこし、昼夜の寒暖差には防寒具などで備えます。つまり、普段の日常のインフラがほとんどない状況での衣食住を楽しむわけです。
 では、自然災害によって自宅から避難する場合を考えてみましょう。全国で地震や洪水、土砂崩れなどで避難を余儀なくされることが増えています。その際はまず自治体指定の避難所に行くことになるでしょう。けれども避難所で備蓄している備品や食品は限られています。プライバシーの保てない環境、体育館などの硬く冷たい床も、体や心へのストレスになりそうです。
 そんなときアウトドアに使える道具とスキルがあれば、避難所を出てテントを張り、自主避難ができます。安全が確認できる場所なら駐車場でも公園や野山でもいいでしょう。キャンプしながら自分たちで衣食住を確保し、情報収集や配布品の受け取りには避難所に出向き、被災復旧を待つのです。そうした自律的な避難をすれば、避難所も混雑を避けられ、備品の使用にも余裕が出ます。

 

普段から楽しみながらスキルを磨いておこう

 普段から遊びとして楽しみつつ、被災時を想定したキャンプ経験を重ねることをお勧めします。
 衣食住の中では例えば衣。夏でも夜間は冷え込むこともあります。ましてや災害はどの季節に起きるか分かりません。暑さ・寒さ対策にはどんな衣類や防寒具がどのくらい役立つかも経験しておくべきでしょう。
 住では、テントの設営に慣れておくこと。風向きや日差し、斜面の状況などを考えた場所の選定も大切です。夜間の明かり、トイレをどう確保するかも重要要素です。
 食に関しては、まずは水と火を得なければなりません。水道が使えない状況では水は川や池、雨水、湧き水などから得られますが、そのままでは飲めません。細菌を除去する高機能の浄水器も出ていますが、それがない場合、ろ過した後、火にかけて数分間煮沸する必要があります。調理だけでなく、安全な水を得るためにも火は必須なのです。
 カセットコンロやバーナーなら火を得るのは簡単です。でも燃料が尽きたら? そう、たき火です。たき火はキャンプの大きな楽しみの一つ。ライターやマッチはぬれると使えないため、第三の火おこし法として、メタルマッチという火おこし道具の使い方も経験しておくと良いでしょう。

 

どんなキャンプ道具があると便利?

 基本的に必要なのはテント、寝袋、マット、ヘッドライトです。これだけあれば野外で寝泊まりはできます。衣類は手持ちの物であっても、できれば春夏秋冬のキャンプで経験して、何が足りないかを体感すると良いでしょう。ただし、これだけだと寝泊まりの道具のみ。料理するには、鍋や網、食器、地面で火を使えない場所ではたき火台なども必要です。アウトドア専門店の他、最近は100円ショップでもさまざまな道具を扱っています。あれこれ試して楽しみ、災害時にも余裕を持って自主避難できるスキル習得を目指しましょう!

テント


表示されている人数は寝袋がギリギリ並ぶ数です。4人用は2人、8人用なら3~4人で使うのが適切です。

 

寝袋

季節に応じて性能もさまざまですが、寒い季節の避難を考えて、寝袋カバーなども考慮してみてください。

 

ランタン

野外で過ごすのに明かりは必須。電池式でも役立ちますが、ソーラー充電式ライトがあればより安心です。

 

ヘッドライト

1人1つ持っていてほしい必需品。トイレなどに移動するにも、手元を照らして作業するにも必要です。

 

火おこし道具

メタルマッチという物。金属の棒をナイフの背などで強くこすると火花が出るので、それを火種に移します。

 

マット

これも1人ずつ必要。寝袋だけでは地面の凹凸や冷気が相当につらいので、マットを下に敷きます。

 

キャンプの知恵簡単!防災レシピ

保存袋を使ってご飯を炊いてみよう 清潔な水がわずかにあれば、ご飯が炊ける方法

①保存袋に米と清潔な水を同量入れる。

 

②鍋で沸かすのは浄化していない泥水でもよい。米と水が入ったジッパー袋を入れ、15分ほどゆでる。

 

③鍋から出し、10分ほど置けばOK。袋のままおかずをのせて食べたり、外側から握っておむすびにも。

 

スパゲティを水で戻してみよう 火力の使用をできるだけ抑える方法の1つ

①乾麺のスパゲティを、清潔な水に漬けておく。

 

②漬ける時間は1時間以上、一晩でも。白くふやふやになるくらいが良い。鍋でゆでるのは短時間でOK。

 

③9分ゆでなどの表記の物も1分ほどでゆで上がり、歯応えもしっかり。他の乾麺にも応用できる。