ほっと一息

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2023.08.11

みんなのSDGs 田んぼソムリエになろう 秋の田んぼの生きものたち

JA広報通信2023年8月号

田んぼソムリエ●林 鷹央

 

 秋の田んぼで生きもの観察をしたことはありますか?

 稲刈りイベントとセットで秋の生きもの調査が行われることがあります。水面に空が映る初夏の風景とは打って変わって、黄金に実った稲が穂を垂らしています。水生昆虫たちは夏までには翅(はね)が生え、水が抜ける頃には近くの水路や池に移動します。

 お盆の頃から大きなショウリョウ(精霊)バッタの成虫になった姿が見られます。そこから秋の稲刈りまでイナゴやササキリなどが稲の周りでたくさん見られます。地面からはコオロギの声も聞こえてきます。クモは稲の上をピョンピョン跳ねるハエトリグモ、大きな巣を張りイナゴなどを食べるナガコガネグモがいます。トンボも西日本ではだいだい色のウスバキトンボが飛び回り、東日本では成熟して赤くなったアキアカネが山から帰ってきていたりします。

 稲刈り直後などは、隠れる場所を失ったケラ(おけら)やバッタ、コオロギ、カエルたちを食べに、サギたちがトラクターの後を付いて歩く姿を見られることもあります。

 辺りを見回せば秋の七草のススキ(尾花)やクズなどが見えることでしょう。春~夏の湿地から、秋は草原的な生態系に変わるのも田んぼの魅力です。

 

モグラのような手をしたケラ

 

コンバインの後を付いて歩くサギ

 

田んぼソムリエ 林 鷹央(はやし たかお)

三重県生まれ、東京育ち。「田んぼの生きもの調査」を通して全国の農村・学校で生物多様性や農・里山文化の意義を伝える。著書に『田んぼソムリエになる!』(安心農業株式会社刊)がある。