ほっと一息

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2023.05.24

みんなのSDGs 田んぼソムリエになろう 田んぼの生きもの調査

JA広報通信2023年5月号

田んぼソムリエ●林 鷹央

 

 田んぼとは何をする所だと思いますか?

 「農家がお米を作る場所」というのが一つの答えです。でも、視点を変えれば「メダカが産卵して育つ場所」と考えることもできます。カエルやトンボ、水生昆虫、ミジンコなど、いろいろと主語を変えてみると、田んぼは多くの生きもののすみかになっていることが分かります。

 お米を作る農家とそれを買って食べる消費者、近隣の学校の子どもたちや行政の人たちなどと「田んぼの生きもの調査」を一緒に行うと、たくさんの生きものが田んぼに関わって生きていることが実感できます。「昔はホタルがいたのに最近は見かけなくなったなぁ」「うちの田んぼはホウネンエビが出るぞ!」など、地域の方から興味深い話が出てくることもあります。年齢も職業も違う人たちの間に、生きものを通じて会話が生まれ、さらに食べ物や農業、環境について考えるきっかけにもなります。

 「田んぼの生きもの調査」は田植え後2週間~中干し(5月後半~7月上旬)までの期間に行われることが多いです。まだ稲が短く水面が見えるので、生きものの採集や観察がしやすい時期だからです。水生昆虫やオタマジャクシ、ヤゴ、小魚などを見かけます。

 田んぼは農家の仕事場のため、勝手に入ることができません。「生きもの調査」は人と自然の間にある「農」の世界を、消費者側が体験できる貴重な機会でもあります。

 

「田んぼの生きもの調査」で見かけるホウネンエビ

 

 

メダカは、昔は普通に田んぼや水路で見かける魚だった

 

 

 

田んぼソムリエ 林 鷹央(はやし たかお)

三重県生まれ、東京育ち。「田んぼの生きもの調査」を通して全国の農村・学校で生物多様性や農・里山文化の意義を伝える。著書に『田んぼソムリエになる!』(安心農業株式会社刊)がある。