ほっと一息

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2023.05.25

歯を失う最大の原因! 歯周病について知りたい

JA広報通信2023年5月号

イラスト:小林裕美子

 

歯を失う原因の第1位は「歯周病」。痛みなどの症状が少ないために気付きにくく、
歯科医院の受診が遅れがちなことや、間違った情報が多く自覚しにくいことがその大きな原因です。
健康な歯を一本でも多く長く保つためには、まず歯周病について正しい知識を身に付けることが重要。
基本知識を、「特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会」の高井康博前理事長にお聞きしました。

 

Q 歯周病ってどんな病気?

A 歯を支える歯肉が腫れたり、骨が失われたりする病気です

 歯周病とは、口の中の細菌(歯周病原因菌)が作り出す酸によって、歯を支える骨(歯槽骨)が分解され壊されていく病気です。
 特徴は、特に痛みもないのに、虫歯ではない健康な歯がグラグラしたり抜けてしまうこと。その初期段階が、歯周病原因菌が作り出す酸によって歯茎(歯肉)が炎症を起こして腫れる「歯肉炎」。この段階なら治療は簡単ですが、進行して「歯周炎」になると膿(うみ)が出たり歯が動きやすくなったりして、最悪歯を失います。治療が可能な場合も長期にわたったり大がかりになったりするので、早期発見・早期治療が何より重要です。

 

Q どうして歯周病が起こるの?

A プラークの中の細菌が、歯を支える骨を溶かすからです

 歯磨きが十分でないと、歯の表面にネバネバしたものが付着しますよね。このネバネバをプラーク(歯垢〈しこう〉)といい、付着した汚れ(食品に含まれる糖など)を原料に、口の中の細菌が作り出す物質です。このプラークが歯肉を刺激し、炎症を引き起こすのが「歯肉炎」。またプラークの中の細菌が唾液に含まれるカルシウムやリン酸と結合すると、歯石という軽石のような硬い物質になります。その歯石を足がかりにして、歯周病の原因となる歯周病原因菌が歯肉と歯の隙間(歯周ポケット)に入り込み、歯槽骨を分解してしまうのが「歯周炎」なのです。

 

 

Q 歯周病って、治るの?

A 最近ではある程度の治療が可能になっています

 歯周病は予防できても治療はできない病気と考えられていましたが、近年、治療法が急速な進歩を遂げ、ある程度、進行を阻止することが可能になっています。
 軽度の歯周病なら「基本治療」で進行を阻止することができます。中等度以上の歯周病になると基本治療に加え、破壊された土台となる骨を特殊な薬剤で作り直す「再生療法」などの外科治療により治癒できる場合があります。ただしこうした治療に対応できる歯科医は限られていますので、歯周病の「指導医」「専門医」「認定医」などの資格を持つ病院を探しましょう。

 

 

Q 予防や、再発防止のメンテナンスはどうすればいい?

A まず、自分の歯の現状をきちんと把握することが重要です

 歯周病には多くの誤解があり、そのため、自分が歯周病であることに気付きにくくなっている場合が少なくありません。「リンゴをかじって出血したら歯周病」という思い込みもその一つ。下のチェックリストにもあるように、出血も確かに歯周病の症状の一つですが、そもそも歯ブラシの先が歯周ポケットに届くような正しい歯磨きをしていないと、歯周病が進行中でも出血しない場合もあります。また「1日3回きちんと歯磨きしているから大丈夫」というのも、誤った思い込みです。どんなにきちんと磨いても、歯磨きだけでは歯周ポケットの中のプラークや歯石を完全に除去することはできません。自己判断せずに、定期的に歯科を受診してチェックし、下の「基本治療」を継続しましょう。
 正しい歯磨き法を毎日実行することも重要です。下の図を参考に、「毛先を磨くポイントに確実に当てる」「軽い力で細かく動かす」「1カ所につき10~20回ぐらい磨く」ことを心がけてください。

 

 

歯周病の「基本治療」とは

歯科医院でのスケーリング
プラークや歯石を専用の器具で取り除く
+
患者さんが行うセルフケア
ブラッシング

 

磨く場所は?

歯周病の始まる場所
+
プラークの残る場所
+
ブラシの毛先が当たりにくい場所

①歯と歯の間
②歯と歯肉の境目
③歯ブラシの頭が届きにくい場所

※特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会公式サイトより

 

 

 

今すぐできる10のセルフチエック!

全体

□ 口臭を指摘された・自分で気になる
□ 朝起きたら口の中がネバネバする
□ 歯磨き後に、毛先に血が付いたり、すすいだ水に血が混じることがある

 

 

歯肉の症状

□ 歯肉が赤く腫れてきた
□ 歯肉が下がり、歯が長くなった気がする
□ 歯肉を押すと血や膿が出る

 

 

歯の症状

□ 歯と歯の間にものが詰まりやすい
□ 歯が浮いたような気がする
□ 歯並びが変わった気がする
□ 歯が揺れている気がする

 

 

判定

チェックが1~3個の場合

歯周病の可能性があるため、軽度のうちに治療を受けましょう。

 

 

チェックが4個以上の場合

中等度以上に歯周病が進行している可能性があります。早期に歯周病の治療を受けましょう。

 

 

チェックがない場合

チェックがない場合でも無症状で歯周病が進行することがあるため1年に1回は歯科検診を受けましょう。

 

※特定非営利活動法人 日本臨床歯周病学会公式サイトより