ほっと一息

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2025.04.25

資産管理の法律ガイド

JA広報通信2025年4月号

JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎

親族法について その20

 

 今回も認知について説明します。
 認知は戸籍法の定めるところに従って届け出をすることで、認知の効力が生じます。そして、その効力は出生のときにさかのぼることになります。
 ところで、認知をするために届け出が必要ですが、その他の要件を求められるケースもあります。まず、成年の子を認知するためには、その子の承諾が必要です。誰かが勝手に「おまえは私の子だ」として認知できることになったら大変だからです。
 反対に、未成年の子を認知する場合には、未成年の子やその親権者の承諾は必要とされてはいません。ただ、もし、虚偽の認知がなされたときは、期間の制限はありますが、認知無効の訴えを提起することは可能です。
 認知対象者が母親のおなかの中にいるときでも、母親の承諾があれば認知できます。勝手におなかの中にいる子を「自分の子だ」として認知できないのは当然のことです。
 さらに、死亡した子についても、その子に直系卑属(その死亡した子の子など)がいるときなら、死亡した子の認知が可能です。ただし、死亡した子の直系卑属の承諾は必要です。「あなたの親は私の子です」と死亡した認知対象者の直系卑属に対して言われても、その直系卑属が承諾しない限り認めるべきでないことは当然です。
 こうした認知ですが、一度、認知してしまうと取り消しができないとされています。しかし、この点については、裁判所の考え方は、認知しても、その子は実の子ではないので親子の関係は生じないという認知無効は、認知した者も主張できるとしています。従って、認知すると単純に撤回はできないので、注意が必要です。
 次回も認知の説明を続けます。