ほっと一息
2025.03.03
なくそう食品ロス
JA広報通信2025年3月号
食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美
花祭り
4月8日は「花祭り」の日です。花祭りとは、仏教の開祖である釈迦(しゃか)の誕生をお祝いする行事です。イエス・キリストの誕生を祝うのがクリスマス、釈迦の誕生を祝うのが花祭りというわけですね。
小さな釈迦の立像の上に花御堂(はなみどう)と呼ばれる花のお堂を飾り、お釈迦様の立像に甘茶をひしゃくで注いで拝みます。
寺院ってコンビニエンスストアより多いんですよ。コンビニは全国で5万6000店舗以上ですが、寺院は7万6000以上もあります。
お寺のお供え物は「地の物、旬の物、果物」といわれ、日持ちしないものもあります。お盆など、時期によってはお供え物がたくさん集まり、食べ切れないことがあります。
そこで、お供え物が駄目になってしまう前に、仏様のおさがりとして、ひとり親世帯の子どもたちにおすそ分けする活動があります。それが「おてらおやつクラブ」です。
2013年、大阪で母子餓死事件が起こったのをきっかけに、奈良県・安養寺の松島靖朗(せいろう)さんが始めました。今では47都道府県の寺2000以上に広がり、日持ちする食品をお供えする人も増えました。
ある男の子は、和菓子のおすそ分けを何度か受け取った後、「お坊さん、もう和菓子はいいので、ぽてとちっぷすをください」と、おてらおやつクラブに手紙を書いてきたそうです。いろんなことを我慢していた男の子が、ようやく子どもらしい一面を見せてくれた……と松島さんはとても喜んだそうです。
皆さんも、この機会に花祭りのことや、寺院や身近な場所で行われている食品ロス対策について調べてみませんか。
食品ロス問題ジャーナリスト
井出 留美(いで るみ)
株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。