ほっと一息

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2024.09.23

介護ハンドブック きょうだいに介護を協力してもらう初めの一歩

JA広報通信2024年8月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

 

 介護は家族だけで、まして1人だけでは支え切れません。きょうだいがいても、それぞれ事情があって頼れないことも多いです。

 介護負担の違いに不満

 中部地方在住のFさん(女性・50代)は夫の協力を得ながら同居で両親を介護しています。Fさんは長女で、妹が2人います。夫の手助けがあるとはいえ、日中はFさん1人で両親に対応しなければなりません。家事と両親の世話でFさんは消耗していますが、「長女だから頑張らなければ」という責任感と同時に「私ばっかり……」という不満もあり、やりきれない思いを抱いています。

 

 小さな協力からお願いしよう

 介護負担と聞くとトイレ介助などの身体介護をイメージしやすいものですが、買い物や調理、掃除といった家事負担や要介護者の話し相手などの心理的負担もあります。実質的な介護に携わる余裕がないきょうだいには、「お母さんが寂しがっているので、5分ぐらい電話で話してくれる?」といった形で、小さな協力依頼をしてみましょう。
 妹たちに遠慮していたFさんでしたが、勇気を奮って「お父さんが食べやすい冷凍食品でいいものあったら教えて?」とお願いしたところ、妹たちは「それなら、次の週末に持って行くよ」「他に必要なものはない?」と、喜んで協力してくれました。実質的な介護負担が軽くなったわけではありませんが、訪問回数が増えた妹たちの様子を見て、ストレスが大幅に減ったそうです。
 関係性が良好な場合は、今回のようにスムーズに協力を得られることもありますが、不仲であったり、相手が介護に無関心である場合、すぐに希望する形で動いてくれるとは限りません。期待し過ぎると、イライラしてかえってストレスになる可能性があります。「ダメ元」でお願いしてみてください。きょうだいの協力の有無にかかわらず、介護保険サービスの他、宅食や家事代行サービスなどの保険外サービスも利用して負担を減らしていきましょう。