ほっと一息

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2024.09.21

みんなのSDGs 田んぼソムリエになろう 田んぼの番をするクモたち(2)

JA広報通信2024年8月号

田んぼソムリエ●林 鷹央

 

 稲が分げつして(株が増えて)丈も伸びてくると、水面を歩く徘徊(はいかい)性のクモだけでは稲を守ることはできません。中干し後あたりから造網性のクモが活躍する時期です。この頃には稲株と稲株の間に水平に網状の巣を張るアシナガグモが出てきます。巣が朝露にぬれ輝く様子は幻想的です。小型のカメムシやウンカ、ガの幼虫などから稲を守ってくれます。細長い体は繊細で戦闘力が低いので、脚を伸ばして稲の葉の裏に隠れたりして身を守ります。

 さらに稲が成長してくると、イナゴなどのバッタ類も寄ってくるので、それを食べるナガコガネグモが垂直に巣を張ります。大きなクモで、危険を感じると巣を激しく揺らして相手をビックリさせます。

 この習性から「地震グモ」と呼ぶ地方もあります。成熟すると大きな雌グモの巣に小さな雄グモが同居している姿が見られます。雄グモが複数いる場合もあります(笑)。

 徘徊性のクモは走り回って獲物を捕獲しますが、造網性のクモは巣を張ってかかった獲物を捕食します。捕らえた獲物は生きたまま「ぐるぐる巻き」にしておけば、腐らずに保存できるので、冷蔵庫がない自然界で生き延びるすべともいえます。

 

 


イナゴを捕らえたナガコガネグモ

 

ナガコガネグモの雌1匹と雄2匹

 

稲の葉の裏に隠れるアシナガグモ

 

 

 

田んぼソムリエ 林 鷹央(はやし たかお)

三重県生まれ、東京育ち。「田んぼの生きもの調査」を通して全国の農村・学校で生物多様性や農・里山文化の意義を伝える。著書に『田んぼソムリエになる!』(安心農業株式会社刊)がある。