ほっと一息

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2024.09.06

みんなのSDGs 田んぼソムリエになろう 田んぼの番をするクモたち(1)

JA広報通信2024年7月号

田んぼソムリエ●林 鷹央

 

 皆さんは何か「苦手な生きもの」はいますか? 今回紹介するのは苦手度ランキングが高そうなクモ。でも話を聞いてください! 田んぼにはさまざまなクモがすんでいます。彼らは全て肉食です。稲や作物を食べに来る虫たちを捕食してくれるので、農業では人間を助けて利益を与えてくれる虫「益虫(えきちゅう)」と呼ばれる存在なんです。
 田んぼで観察できるクモの種類は、稲の成長段階によって変わってきます。初夏に田んぼに水が張られ、田植え後あたりから主に見かけるのはコモリグモ、ハシリグモなど水面を素早く走り回って獲物を捕らえる徘徊(はいかい)性のクモです。
 コモリグモの仲間はどこででも見られる小型のクモで、種類にもよりますが、雌はお尻に付けた卵のう(卵の入った袋)から出てきた赤ちゃんを、数日から1週間ほど背負って過ごします。漢字で書くと「子守」グモになるわけです。
 田んぼのハシリグモは大型のものが多く、初めて見た人はびっくりするはずです。生物が多い豊かな環境でよく観察できます。クモの天敵はカエルですが、ハシリグモは小さなカエルなら食べてしまいます。水に潜ってオタマジャクシや小魚を捕食したり、空気の膜に包まれながら水中に隠れたりすることもあります。
 このような話を聞くと、少しクモが魅力的に見えてきませんか?

 

 


小さい方がコモリグモ、大きい方がハシリグモ

 

 

田植え後あたりから見かけることができます

 

 

 

田んぼソムリエ 林 鷹央(はやし たかお)

三重県生まれ、東京育ち。「田んぼの生きもの調査」を通して全国の農村・学校で生物多様性や農・里山文化の意義を伝える。著書に『田んぼソムリエになる!』(安心農業株式会社刊)がある。