ほっと一息

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2024.09.05

なくそう食品ロス 精米後1カ月で棚から撤去する米

JA広報通信2024年7月号

食品ロス問題ジャーナリスト●井出留美

 

 スーパーで売っている米は、精米して1カ月たったら商品棚から撤去しているそうです。最初に聞いたのはあるスーパーを取材したときでした。理由は「古いから」。近隣にフードバンクができてからはそちらに寄付しているそうです。
 別のスーパーでも、精米して30~40日たった米は撤去していました。以前は、精米年月日が表示されていましたが、最近では「旬」表示になっています。例えば「2024年10月初旬」といった具合です。そのスーパーでは「初旬」は1~10日、「中旬」は11~20日と考え、30~40日たったら処分しています。捨てずに社員に販売している店舗もあれば寄付する店もあるとのこと。
 私の義父母は長野県で米と野菜を作っています。収穫した米は玄米の状態で保管し、食べる前に一定量を精米しています。精米して1カ月で捨てることはありません。
 食品業界には「3分の1ルール」という商慣習があります。賞味期間を3分の1ずつに区切り、最初の3分の1でメーカーはコンビニなどの小売へ納品し(納品期限)、次の3分の1で小売は販売を終える(販売期限)というものです。例えば12カ月の賞味期限であれば、製造して4カ月が納品期限、8カ月が販売期限となります。まだ賞味期限が4カ月以上残っていても販売できなくなるのです。
 1990年代に大手スーパーがこのルールを作り、他のスーパーも追随しました。これにより、2013年には年間1200億円以上の損失が生じていました。その後、ペットボトル飲料や菓子の納品期限を3分の1から2分の1へと延長する動きがあり、今では年間400億~500億円のロスに減りました。それでも、法律ではない商慣習によって食品ロスが生じているのです。
 農家が丹精込めて作った米を精米して1カ月で捨てるルールはなくなってほしいと強く願います。

 

 

 

食品ロス問題ジャーナリスト 井出 留美(いで るみ)

株式会社office3.11代表取締役。博士(栄養学/女子栄養大学大学院)修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。『食べものが足りない!』『SDGs時代の食べ方』『捨てないパン屋の挑戦』など著書多数。