ほっと一息

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2024.09.07

介護ハンドブック 家族が1人歩きで行方不明になったときは

JA広報通信2024年7月号

介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子

 

 認知症の人が行方不明になったと聞くと、症状がかなり進んでいる人だと思われるかもしれません。ところが実際は、普段の生活には支障がないように見える人が突然行方不明になることがあります。

■ 物忘れ症状が出ていた夫が突然行方不明に! 

 関東在住のKさんの夫(60代)は、最近、同じことを何度も聞くようになりました。しかし、趣味の畑仕事や地域活動には積極的だったため、Kさんは様子を見守っていました。ある日、夫は朝から自転車で畑に出かけ、お昼を過ぎても戻ってきません。畑に向かうと夫はおらず、立ち寄りそうな場所を探しましたが、夕方になっても連絡一つありません。Kさんは意を決して警察に相談しましたが、夜になっても見つかりませんでした。翌日の昼過ぎ、夫は隣県で、自転車で転倒しているところを通りすがりの人に発見されました。幸いなことに、軽いけがと脱水症状だけで済みましたが、Kさんはこのトラブルをきっかけに、夫の受診と介護保険の申請に踏み切りました。

 

 

■ できる限り早く警察に連絡を

 家族が行方不明になったときは、速やかに警察に連絡しましょう。行方不明になって3日以降は発見と生存率が大幅に低下するとの調査結果があります。認知症の症状が軽い人は比較的体力があり、徒歩で県をまたいで移動することもあります。市区町村や地域包括支援センター、介護保険を利用している場合はケアマネジャーにも連絡し、できるだけたくさんの人に伝えましょう。地域によっては、位置情報が分かるGPS機器の貸し出しサービスや、行方不明の方を知らせる連絡網を整備しているところもあります。お住まいの地域でどのようなサービスがあるのかを調べておきましょう。1人暮らしの場合は、行方不明になっていることが判明するまでに時間がかかることもあります。安否確認のために地域見守り隊や宅食サービスなども活用できます。