ほっと一息
2024.08.19
介護ハンドブック 介護のプロでも、自分の家族の介護は難しい
JA広報通信2024年6月号
介護者メンタルケア協会代表●橋中今日子
経験豊富な介護のプロであっても、いざ自分が家族の介護をする立場になると、いつもと同じ判断ができなくなることがあります。
実の親に怒鳴ってしまったベテランケアマネジャー
ケアマネジャーとして15年のキャリアを持つKさん(男性・50代)の父親は、車で20分ほど離れた実家で1人暮らしをしています。父親に物忘れ症状が出ていることに気付いたKさんは、病院での診断や介護保険の申請を促しますが、父親は「何も困っていない! 必要ない!」と聞き入れません。Kさんは、父親を否定せず、寄り添いながら説得していましたが、不安と心配が募って余裕がなくなってしまったのでしょう。先日、とうとう「いいかげんにしろ! もう、サポートが必要な状況なんだと認めろよ!」と、怒鳴りつけてしまったのです。Kさんは「プロとして、あってはならない言動を取ってしまった……」と、自信を失いかけたそうです。
他者であるプロの介入が必要不可欠
家族の介護に直面したときは、地域包括支援センターをはじめとした窓口とつながることが、適切な支援を受ける第一歩です。冷静になったKさんは「自分だけで父を説得しようとしてしまった」と、実家近くの地域包括支援センターに電話しました。相談員から「お話を聞かせてください、と訪問する形で認定調査をするのはどうでしょうか?」との提案があり、その後2カ月ほどで介護保険サービスを受ける段取りがつきました。
Kさんは、「家族とは距離感が異なる他者の関わりがあってこそ、介護はうまくいくのだと痛感しました」と話します。さらに、家族だけで介護を抱え込みがちな人にも自分の体験を伝え、プロの介入を積極的に呼びかけているそうです。
介護のプロであっても難しいのが自分の家族への対応です。プロでない私たちであればなおさらでしょう。1人で頑張らず、プロをどんどん頼ってくださいね。