ほっと一息

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2024.08.08

知って納得! 税金講座 消費税の還付の仕組みと法改正

JA広報通信2010年8月号

JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問税理士●柴原 一

 

 事業者が消費税の納税額を計算する際、大規模な設備投資をした時など「預かった消費税-負担した消費税」の金額がマイナスになる場合があります。このマイナスになった金額は還付されます。ただし、賃貸住宅を建築した場合には、その建物が消費税の課税対象収入に貢献するものでないことから、原則としてその建物に係る消費税を差し引くことはできません。しかし、この場合でも農業収入や駐車場収入など、ほかに課税対象収入がある時は、還付を受けられる場合があります。

 例えば、その年の農業収入が315万円(うち消費税15万円)あるとします。一方、同じ年に賃貸住宅(建築代金1億円、消費税500万円)を新築し、12月中に賃貸開始した場合、仮にその年の家賃収入が10万円であり、かつ、その者が課税事業者を選択しているならば、農業収入の消費税15万円から建物の消費税500万円を差し引いた485万円が還付されます。

 消費税では、取得価額が100万円以上など一定の要件を満たす固定資産(調整対象固定資産)を取得した時は、取得した年(課税期間)以降3年目の課税期間に調整計算を行います。この調整計算を行うと、多くの場合については、いったん消費税が還付されても、3年目に還付された消費税の大部分を納めることになります。しかし、今までは免税事業者が課税事業者になることを選択し、還付された課税期間を含め2年間課税事業者となり、3年目に免税事業者に戻ることでこの調整計算を免れることができました。

 今回の改正(平成22年4月1日以後開始する課税期間から適用)では、免税事業者が課税事業者になることを選択した時は、3年間は免税事業者に戻れないこととされました。さらに、強制的に課税事業者となる課税期間については簡易課税制度の適用も受けられなくなりました。従って、免税事業者が課税事業者になることを選択し、なおかつ、調整対象固定資産を取得した時は注意が必要となります。