ほっと一息
2024.07.25
野菜のルーツ 世界で愛される辛さ――トウガラシ(ナス科)
JA広報通信2010年8月号
植物ライター ●岡田比呂実
世界で最も多量に栽培されているスパイス。韓国のキムチにもインドのカレーにも、イタリアのパスタソースにも欠かせません。和食だって、きんぴらごぼうに1本のトウガラシを入れなかったら味が締まらないし、七味唐辛子がなかったら、冷ややっこもうどんもちょっと味気なくなってしまうでしょう。
トウガラシの原産地は熱帯アメリカ。中央アメリカや南アメリカ各地では、2000年以上前から栽培されていたようです。ヨーロッパへは、1492年にコロンブスによって持ち込まれました。さらに16世紀に入り、インドや東南アジア、中国へと広まっていきました。
日本への渡来も16世紀ごろ。1542年にポルトガル人によってもたらされたとも、1593年、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際に持ち帰られたともいわれています。
江戸時代には多くの色や形の品種が存在し、すでに辛味の少ない品種もあったことが『農業全書』(1697年)などに記録されています。
トウガラシの辛さのレベルは品種によって大きな差があり、例えば韓国のキムチ用品種は辛味がマイルドで、さわやかな香りとほのかな甘味が特徴です。
辛味成分のカプサイシンは、脂肪燃焼効果があるといわれ、ダイエット面からも注目されています。ただ、辛さは唾液(だえき)の分泌を高め、食欲を増進させます。効果については食べ方次第といったところでしょうか。食べ過ぎると胃を荒らすことになるので要注意。種子の近くのワタの部分が最も辛いため、種子ごと取り除くと辛味が少し和らぎます。
なお、1株に赤、白、紫、だいだい、黄色など、さまざまな色の果実が同時につく五色トウガラシなどは、観賞用に栽培されています。