ほっと一息

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2024.07.26

資産管理の法律ガイド 親族法について その10

JA広報通信2024年6月号

JA全中・JAまちづくり情報センター 顧問弁護士●草薙一郎

 

 今回は離婚と氏についての説明をします。

 婚姻をすることで、夫婦は夫または妻の氏を称することになります(民法750条)。しかし、夫婦が協議上の離婚をすることになると、婚姻によって氏を改めた夫または妻は、婚姻前の氏に復することになります(民法767条1項)。そして、このことは裁判上の離婚にも準用されています。

 今の世の中ですと、妻が夫の氏を称することが多いようですので、夫婦が離婚すると、妻は元の氏に当然に復するということになります。

 ただ、婚姻時の氏(離婚の際に称していた氏。以下同様)を称したいと希望するケースもあり、この場合には離婚の日から3カ月以内に市役所などに届け出をすれば、婚姻時の氏を称することができます(同条2項)。婚姻中の氏を称したいときは、その旨の届け出が必要で、そうでないと元の氏に戻ってしまいます(なお、元の氏から婚姻時の氏に変更したいとか、婚姻時の氏を選択したが、やはり元の氏に戻りたいなどと考えても、変更はできません。このような場合は戸籍法の定める氏の変更の裁判を得る必要があります)。

 夫婦の子ですが、父母が離婚しても子の氏は夫婦の婚姻時の氏のままです。従って、母が元の氏に戻るときは、子は父と同じ氏を称していますので、父の戸籍に入ったままで、母のみが父の戸籍から出ることになります。

 もし、母が子の親権者であるときは、親権に服する子と親権者の母の氏が異なり、戸籍も別となります。そのため、子は家庭裁判所の許可を得て、届け出ることで母の氏を称することができ、この場合は、父の戸籍から母の戸籍に移動します。子が15歳未満のときは、親権者が子に代わって、この申し立てが可能です。

 なお、母が婚姻時の氏を称することにしても、それは元の氏とは違う同名の氏と考えられるので、前述の子の氏の変更手続きが必要です。